2017 Fiscal Year Research-status Report
顕熱フラックスの乱れに影響する傾斜地水田群の風および日射特性に関する研究
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17K08006
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
竹下 伸一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (40381058)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 傾斜地水田群 / 天空率 / 日照時間 / 流出解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年にあたるH29年度は,対象となる宮崎県日南市酒谷の坂元棚田にて,田植えが終了後の6月末から稲刈り直前の10月まで,シンチロメータによる顕熱フラックスの観測,結露量および非常の微風速の計測,全天写真の観測をおこなった.圃場の微気象データより熱収支特性の解析,全天写真より圃場毎の天空率の算出と解析,さらに新たに灌漑取水源にてこれまでに計測してきた渓流水位の計測値を用いて谷川の流出解析を行った.主要な研究成果として以下の2点が得られた. 1つ目は,棚田内の約1500箇所にて観測した全天写真より圃場毎の天空率を算出し,石垣の影響による天空率の減少,棚田周辺の山・尾根による天空率の減少を定量化し,詳細な天空率分布を算出した.またこれに基づいて圃場の一による日照時間差を算出し,日射量特性を定量的に示した.これらの結果は学会発表するとともに論文として報告した. 2つ目は,棚田の灌漑水源となっている谷川にてこれまでに観測してきた水位データを詳細に解析し,さらにTOPMODELを適用して流出解析を行った.加えて,温暖化予測データセットであるd4PDFを利用して,今後の灌漑水への影響を検討した.その結果,灌漑期間中に急激に渓流水が低下し,灌漑が困難になる状況が発生しうることが明らかになった.これは棚田の水収支と深く関連し,それは灌漑期の蒸発散量(潜熱フラックス)に影響し,最終的に熱収支にも係わるもので,これを示すことが出来たことは大きな成果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げていた傾斜地水田における水田毎の日出・日照時間に関する定量化を初年度に完了することが出来た.これに基づいて次の課題である結露量等との関連性に望むことが出来る. また,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる水収支に関して新しい展開がうまれたので,これを活かしていきたい. ただ,本研究で重要な位置を占めるシンチレーションの観測について,観測期間中に落雷によって機器が故障してしまった.現在修理中ではあり当初の予定通りには行かない可能性がでてきているが,これ以外で研究目的に迫れる課題がいくつかあるため十分にリカバリーできると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策としては,初年度に定量化が完了した詳細な天空率・日射量情報をもとに圃場の結露に関する時空間的特性の実態に迫っていく. シンチレーションの計測に関しては落雷による機器の故障という不測の事態に陥っているが,本研究では風の特性や,蒸発散量,水収支といった他のアプローチから水田の熱収支に迫ることが可能であるので,本年はこれらの観点から検討を加えていく予定である. また,初年度新しい展開として,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる灌漑水源の流出特性をおこなった.次年度以降はこれも新しい研究のアプローチとして加え,研究に厚みを持たしていきたいと考えている.
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Research Products
(5 results)