2018 Fiscal Year Research-status Report
潮汐に最適化した周波数解析手法の利用による淡水レンズ水資源量時間変化の要因分析
Project/Area Number |
17K08011
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
白旗 克志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (10648281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 淡水レンズ / 時系列データ / 周波数分離 / 潮汐 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象である沖縄県多良間島内の地下水観測孔において、淡水レンズ挙動を連続的に把握するための地下水位と多深度電気伝導率(EC)の30分間隔の自記観測と、降水による地下水かん養を把握するための複数深度の地下温度の自記観測を継続した。これにより得られた前年度より連続する地下水位観測データに、潮汐の主要成分の周波数に合わせて最適化したデジタルフィルタを適用して、短周期成分と長周期成分を分離した。 その結果、観測データには、潮位の満潮・干潮の伝播の影響による概ね1日2回の周期的な変動のほか、秋季には台風の接近に起因すると考えられる数日間程度の一時的な水位上昇がみられた。加えて、水位が夏季に高く冬季に低い傾向が確認され、年周期の変動もあることが見込まれた。地下水位時系列データに含まれるこれら3つの変動成分、すなわち概ね1日2回の周期的変動、数日間の一時的上昇、年周期の変動は、いずれも島の周囲の潮位変動の伝播によるものと考えられ、淡水レンズの上側境界である地下水位の変動要因としては潮汐の影響が卓越していると考えられた。降水の地下水位への影響はほとんど確認できなかった。今後ECや淡水レンズ厚さの時系列データについても、その変動要因を分析する予定である。 なお地下水位の観測データに潮汐成分に合わせ最適化したデジタルフィルタと離散フーリエ変換を用いることによって得られる地下水位の正弦振動成分を利用して、淡水レンズ帯水層の水理定数を推定した。この結果については学会講演会で発表し論文としても公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおりの観測項目について連続的に観測を継続できている。当該年度は地下水位の観測データの分析に重点をおいた結果、ECと淡水レンズ厚さについての分析は進んでいないが、時系列データの蓄積は順調に進んでおり、水位データと同様の分析方法を用いて変動要因を明らかにできると見込まれるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現地における地下水位・EC等観測を継続し、得られた時系列データの分析により、ECの時間変化の要因を前年度に分析した水位変化の要因との異同にも注目して分析する。また地下水位と多深度ECの時系列観測データから淡水レンズ厚さの時間変化データを作り淡水レンズ厚さの変動要因を分析することで、現地観測により把握される淡水レンズ水資源量の変化がどのような要因に影響されているのかをとりまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由)購入予定の観測資材の一部を別予算により手当できたため。 (使用計画)過年度に用いたうちバッテリー切れとなった観測機器のバッテリー交換・修理に用いる。
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