2019 Fiscal Year Research-status Report
農産加工品の輸出促進に資する消費者のニーズを考慮した青果物の最適乾燥理論の構築
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17K08015
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 減圧マイクロ波 / ブランチング / 青果物流通 / 乾燥速度の増加 / 品質 / 消費エネルギ / ライフサイクルアセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
青果物輸送におけるロス削減を目的とした緩衝包装の高機能化は、輸送時における青果物の損傷を低減する一方で、包装資材の使用に起因する環境負荷の増加が懸念される。そこで、イチゴのライフサイクルを例に、緩衝包装の使用が環境負荷に及ぼす影響について評価を行った。全ての影響領域において、栽培工程における環境負荷の寄与度が32.1~91.8 %と最も大きく、この工程の負荷を減少させることが重要であることを示した。また、緩衝包装の有無による環境負荷の比較を行い、いずれの包装条件においても無包装条件と比較して環境負荷は減少し、緩衝包装の使用により環境負荷は最大94.3 %削減されることを示した。損傷率の最小化が必ずしも環境負荷の最小化には繋がらないことを明らかにし、緩衝包装について損傷抑制の観点のみならず、環境面からの評価も併せて行うことが重要であることを示した。 乾燥青果物の製造工程において、加工中および加工後の品質劣化の抑制を目的とした加熱処理であるブランチング処理を乾燥前に行うことで、その後の乾燥速度が増加することが知られている。そこで、ブランチング処理に伴う乾燥速度の増加が乾燥キャベツ製造工程における環境負荷低減に及ぼす影響について解析するとともに、乾燥後製品の栄養成分から環境効率を算出し、品質と環境負荷の関係について考察した。熱湯ブランチング処理により乾燥時の電力消費量はおよそ半分に減少し、LIME2における統合化の結果、63.4 %の環境負荷削減効果が得られた。また、ブランチング処理によりL-アスコルビン酸含有量およびBrix糖度は減少するものの、環境効率はブランチング処理を行わない条件よりも高く、より良好な処理方法であることが明らかとなった。これらの結果から、ブランチング処理は乾燥キャベツ製造工程において環境負荷の低減効果を有する処理方法であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、LCA手法を用い、品質変化を考慮した青果物流通プロセスにおける環境負荷の解析を実施した。これらの結果は、2019農食施設CIGR VI国際大会において、「輸送時の振動による損傷を考慮したイチゴのライフサイクルアセスメント」とのタイトルで発表するとともに、農業食料工学会誌に「青果物輸送における緩衝包装が環境負荷削減に及ぼす影響 ―輸送振動による損傷を考慮したイチゴのLCA―」とのタイトルで論文を公表した。また、農産物加工プロセスのLCAを実施し、日本LCA学会誌に「LCA手法に基づく乾燥キャベツ製造工程における環境影響評価 ―ブランチング処理に伴う環境負荷低減の可能性―」とのタイトルで論文を公表した。当初予定していたLCAに関わる研究成果が得られたことから、進捗状況はおおむね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、減圧マイクロ波処理による青果物加工の高付加価値化について検討するため、乾燥シイタケと濃縮トマトピューレを一例として減圧マイクロ波処理を適用し、品質変化を最小限とする処理条件について検討する。これまでの研究機関で得られて結果を総合し、環境負荷やコストを低減しつつ、青果物の品質を保持できる減圧マイクロ波を用いた新たな加工理論の構築に資するデータを取りまとめる。
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Causes of Carryover |
本年度は、イチゴを対象としてLCA手法による環境負荷の解析を実施したが、モモおよびリンゴを対象とした評価結果については学術論文として公表するまでには至らなかった。そのため、データの再解析も含めて再度研究成果を取りまとめ、学術論文として取りまとめる作業を行う(Int J LCA誌を予定)。さらに、減圧マイクロ波による乾燥シイタケの高付加価値化やトマトピューレの濃縮についても検討し、LCAに関わる研究成果と同様、関連する学術雑誌(Food Science and Technology Researchを予定)に投稿することにより、当初目的の達成および研究成果の広範囲な周知が可能となる。これら研究成果の取りまとめおよび公表に関わる一連の取り組みにより、残りの研究費は全額執行見込みである。
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Research Products
(10 results)