2018 Fiscal Year Research-status Report
薬用植物カラスビシャクの国産化を目指した至適栽培条件の探索と結実制御法の開発
Project/Area Number |
17K08021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江口 壽彦 九州大学, 生物環境利用推進センター, 准教授 (40213540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 宏幸 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (30253470)
尾崎 行生 九州大学, 農学研究院, 教授 (60253514)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境制御 / 薬用植物 / 生産性 / 遺伝的変異 / 育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,カラスビシャクの栽培植物化・国内生産を目指し,1)効率的生産のための至適栽培条件の探索,2)交雑育種による優良系統作出のための結実制御法の開発を行うことを目的としており,以下のことを行なった. 1)これまでの研究で,カラスビシャクの良好な生育が認められた通気性・保水性に優れた灰白色の多孔質火成岩(商品名「パミス」)を培地とする固形培地式水耕装置を用い,研究代表者(江口)が属する九州大学生物環境利用推進センター(以降,生環セ)の有する気温・湿度が高度に制御された人工光グロースキャビネットを用いて高い再現性が期待できる試験栽培を行なった.材料には品種登録申請中の超多収系統を用いた.本系統については昨年度(平成29年度)に人工光下と太陽光下との生育の差異の有無を検証しており,両条件下で大差ない生育,塊茎収量,および塊茎品質が得られたので,今回,環境条件創出において高い再現性が期待できる人工光グロースキャビネットでの栽培実験を行なうこととなった.品質の評価には,共同研究者の田中が開発したカラスビシャク由来水溶性生理活性多糖類を特異的に定量できるELISA法を用いた. これによって,特定の気温,湿度,光条件下でのカラスビシャクの成育過程における塊茎の肥大と塊茎への有用成分蓄積の経時的な様相を明らかにして,今後の至適栽培条件探索のための比較基準となる貴重なデータが得られた. 2)倍数性の変異を調査するための準備を行なった.本研究実施の場である生環セでは,北海道から沖縄県にかけての約40地区から多数の系統(180個体以上)を収集しており,これらの系統の一部を用いて,花粉稔性,花粉サイズ等の調査を試み,また,サイトフローメーターでの分析を行なった.その結果,日本に自生するカラスビシャクには倍数性の変異があることが示唆された.しかし,倍数性と花粉の大きさには関連は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,カラスビシャクの栽培植物化・国内生産を目指して,1)効率的生産のための至適栽培条件の探索,2)交雑育種による優良系統作出のための結実制御法の開発を行うことを目的としている.計画では,課題1)については,光環境(光量,光質)に着目した栽培実験を行なうこととしており,課題2)については,本種の育種系構築に必要な遺伝的変異の調査,開花・結実に必要な環境条件の調査を行ない,あわせて日本に自生する遺伝子源の収集も試みることとしている. 平成30年度は,課題1)について,これまでの研究で育成したカラスビシャク超多収系統の至適栽培条件を探索するため,その比較対象となる特定の気温,湿度,光条件下での植物の生育,塊茎の肥大と塊茎への有用成分蓄積の経時的な様相を明らかにした.また,課題2)についても,日本各地から収集した系統を用いて,花粉稔性,花粉サイズ等の調査を試み,また,サイトフローメーターでの分析を行ない,日本産カラスビシャクには倍数性の変異があることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,おおむね順調に進展しており,これまでに得た知見に基づきつつ,研究計画通りに進めて行く.まず,主要課題の一つとして,カラスビシャクの至適栽培条件の探索を行なう.特に,光条件(光強度,光質など)に着目して栽培実験を行なう.また,主要課題のもう一課題として,本種の育種系構築に必要な遺伝的変異の調査,開花・結実に必要な環境条件の調査を行ない,あわせて日本に自生する遺伝子源の収集も試みる.
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Causes of Carryover |
研究の主たる場所である九州大学生物環境利用推進センターの新キャンパスへの移転が平成30年度に行なわれたため,移転関連の作業で本研究のための時間を十分に確保するのが難しかった.そのため,次年度使用額154,077円が生じた.これは主に共同研究者の物品費として用いる. 平成31年度の研究費100万円の使用計画は【物品費:51万円】1)生薬としての品質評価のための経費,2)材料植物育成・生育実験のための園芸資材,3)化学分析・遺伝子発現解析等に必要な器具・試薬,4)健全な植物育成に必要な肥料・殺虫剤等の農薬,5)データの整理・処理・保存のためのコンピュータ用消耗品,8)その他.【旅費:21万円】1)情報交換や研究成果の公表のための国内旅費.【人件費・謝金 8万円】1)栽培装置のセッティング,多数のサンプルの調査のための実験補助.【その他:20万円】1)学術誌等への成果発表,2)材料準備・栽培実験の場となる環境制御施設の利用料金.に用いる.
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Research Products
(3 results)