2017 Fiscal Year Research-status Report
温暖化による気温上昇を上回る寒地への高温性作物の急激な産地拡大の気象的原因解析
Project/Area Number |
17K08026
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
濱嵜 孝弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (80442789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 学 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (10469843)
廣田 知良 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, グループ長 (20343949)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地温 / 気温 / ラッカセイ / 被覆栽培 / 温暖化 / 栽培適地 |
Outline of Annual Research Achievements |
「高緯度の地域ほど、栽培期間中の地温-気温差が大きい(同じ気温に対して地温が高い)」という仮説を、全国各地の気象官署・測候所の地温データ(農林水産省・気象庁, 1982:地中温度等に関する資料)を用いて検証した。その結果、高緯度地域ほど相対的に地温が高いという傾向は見られず、無被覆栽培については、上記の仮説は棄却された。栽培用の各種被覆が気温と地温との関係に及ぼす影響について、ポリエチレンマルチ(以下、マルチ)および有孔ポリエチレントンネル(ポリトンネル)、長繊維不織布のべたがけ(べたがけ)の3種類の被覆を用いた栽培試験にて調査した。無被覆と、マルチ、マルチ+べたがけ、マルチ+ポリトンネルの3種類の被覆法の日平均気温と地温は、各処理内で線形の関係を示し、気温と地温との関係において、マルチによって無被覆よりも相対的に地温が高まり、マルチ+べたがけ、および、マルチ+ポリトンネルにおいては、マルチのみとほぼ同じ気温と地温との線形関係を保ったまま、気温と地温双方が高まっていた。この栽培試験のデータを用い、ラッカセイの生産安定性評価・適地評価を目的とした開花予測モデルの作成を試みた。無被覆と3種類の被覆法、それぞれ異なる気温・地温条件で栽培したラッカセイの開花予測には、有効積算気温よりも有効積算地温を用いた開花予測モデルの方が予測精度が高く、さらには生育時期を2分して初期は有効積算地温、後期は積算気温にすることで、有効積算地温のみのモデルよりも予測精度が高い開花予測モデルを作成できる可能性が示された。なお、栽培試験ではサツマイモも供試したが、ごく大まかには気温もしくは地温が高いほど収量が増加する傾向が見られたものの、茎葉のみ繁茂し収穫物である根茎の発達が抑制される「つるぼけ」現象が見られるなど、気温もしくは地温と収量・生育との関係の定式化には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温性作物の栽培導入地域の急速な北上・拡大の原因について、「地温-気温差が、特に高緯度地域で高い(相対的に地温が高い)」という仮説は無被覆の土壌においては成り立たないと結論づけられ、解析目標がマルチ等被覆の効果の地域間差に絞られた。被覆下の熱収支関連の観測は、ポリトンネルやべたがけ下の微気象観測において、急速な植被の発達・空間の密閉により精度の高い測定が困難となる懸念が新たに生じたことから、観測法や測器の構成を再検討し、実施を延期した。一方、栽培試験の結果から落花生の開花予測モデルを作成するなど、計画よりも進んだ部分もあることから、全体の進捗はおおよそ予定通りと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
試験圃場の面積・労力も考慮し、今後は対象作物をラッカセイに絞る。被覆がラッカセイの生育に及ぼす影響をより詳細に解析するため、生育途中の生育調査を実施し、収穫期まで含めた温度-生育モデルを作成する。作成したモデルで、被覆栽培による温熱環境改善も加味した温暖化の進行と栽培地域の北上との関係を評価する。被覆内の熱収支関連の観測は、狭い空間・発達する植被に対応した観測方法を検討し、実施する。地温推定モデルの作成は、まずは無被覆、マルチ被覆での地温推定から着手し、熱収支関連連観測の結果を踏まえて、ポリトンネルやべたがけの影響も含めたモデルを作成する。
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Causes of Carryover |
ポリトンネルやべたがけ下の微気象観測において、急速な植被の発達・空間の密閉により精度の高い測定が困難となる懸念が新たに生じたことから、観測法や測器の構成を再検討し、測器の購入・観測は検討結果を踏まえて、次年度以降に行うこととした。
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