2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of bovine ovarian activation and improvement of fertility by inhibiting the Hippo signaling pathway
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17K08048
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
小林 仁 宮城大学, 食産業学群(部), 教授 (40234827)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣活性化 / Hippo signal / スフィンゴシン1リン酸 / ウシ / CCN2 / Birc5 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの卵巣では1回の排卵に約1000個の卵胞がリクルートされるが、その多くは退行し最終的に排卵に至るのは1個である。もし、発育途中の卵胞を活性化することで退行する卵胞数を減らすことができれば、卵胞の量と卵子の質が確保され受胎率の向上が期待される。また、過排卵処理やOPUなど既存の技術と組み合わせることで新たな繁殖技術開発にもつながる。そこで、初期卵胞の発育を抑制しているHippoシグナルを卵巣組織の断片化やアクチン重合剤により切断し、初期卵胞の活性化を試みた。実験Ⅰ:ウシ卵巣の断片化培養を行い、転写コアクチベーターであるYap(Tead転写因子と協調して細胞増殖を促す)の局在について免疫染色法を用いて調べた。培養開始時は、顆粒層細胞の細胞質にYapの局在が認められ、6時間後および48時間後には核内へのYapの移行が観察された。次に、組織断片化培養後の細胞増殖因子の遺伝子発現を調べた。Hippoシグナルの下流にある細胞増殖因子のCCN2およびBirc5遺伝子は、卵巣の断片化培養により増加傾向を示した。実験Ⅱ:アクチン重合剤添加による組織断片化培養における細胞増殖因子の遺伝子発現を調べた。スフィンゴシン1リン酸(S1P)添加によりCCN2およびFGF1遺伝子の発現は増加した。また、卵巣の断片化培養ではCCN2とFGF1の遺伝子発現に相関はみられなかったが、断片化培養にアクチン重合剤を添加することで、両遺伝子の発現に相関が認められるようなり、Hippoシグナルの切断方法によって発現が亢進する遺伝子に違いがみられた。一方、同じくアクチン重合材であるオレオイル-L-α-リゾホスファチジン酸(LPA)では、細胞増殖因子の遺伝子発現に顕著な変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 ①卵巣の断片化培養によりHippoシグナルが切断されることを確認するため、転写コアクチベーターであるYapの局在を調べたところ、顆粒層細胞の細胞質から核内への移行が認められ、Hippoシグナルが切断されていることを明らかにできた。②卵巣断片化培養により、細胞増殖因子のCCN2やBirc5遺伝子の発現は増加傾向を示したが、卵巣採材から断片化培養までの時間によっても遺伝子発現量が変化したことから、断片化培養による細胞増殖遺伝子の発現量に有意差は見られなかった。次年度は、採材から断片化培養までの時間を短縮して、遺伝子の発現を調べる予定である。③アクチン重合材の添加では、S1Pは細胞増殖遺伝子の発現が亢進したのに対し、LPAは発現量に差は見られなかった。アクチン重合剤の種類によって、Hippoシグナル切断の程度に差がある可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ウシ卵巣採材から断片化培養までの時間をできるだけ短縮かつ等間隔となるようにして、細胞増殖遺伝子の発現を調べる。もし、有効な違いが得られない場合は、Leaser Capture Microdissection(LCM)法により、二次卵胞を採取して遺伝子発現を調べる。また、アクチン重合剤が卵胞発育に及ぼす影響をin vivoで調べるため、実験動物(ラットまたはウサギ)の卵巣にS1Pを直に注入して飼育し、その後卵巣の組織標本を作成して卵胞発育状況を観察する。
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Causes of Carryover |
少額なので無理に使用しなかった。今年度の物品費に組み込んで執行する。
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