牛の妊娠認識における子宮内ケモカインクロストーク機構の解明

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K08056
• Research Institution: National Agriculture and Food Research Organization
• Principal Investigator: 作本 亮介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門 家畜育種繁殖研究領域, 上級研究員 (20343999)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 繁殖 / 家畜 / 妊娠 / ケモカイン / 子宮 / 遺伝子

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、妊娠初期の牛における免疫応答系、特にケモカインによる子宮や免疫細胞の局所機能調節機構を解明することを目的とした。本年度は、１）妊娠にともなう牛白血球のCCL8、CXCL10遺伝子発現変化、２）培養牛子宮内膜組織のプロスタグランジン（PG）合成におよぼすCCL1の影響を検討した。
１）人工授精後14、15、16、17ならびに18日目の黒毛和種経産牛から採血後に凍結保存し、その後の牛の状態（発情回帰日あるいは分娩）から妊娠区、早期胚死滅区、ならびに後期胚死滅区に分類した（各５頭）。凍結保存した全血液からRNA抽出が可能なキットを用いて総RNAを抽出し、リアルタイムPCR法で遺伝子発現を調べた結果、妊娠区の18日ではⅠ型インターフェロン応答性遺伝子（ISG15, MX1, MX2）だけでなく、CCL8およびCXCL10遺伝子発現が14日と比較して有意に高くなることが示され、CCL8とCXCL10が牛妊娠認識機構に密接に関与する可能性が示された。
２）発情周期8-12日にある黒毛和種経産牛から子宮を採取後、当研究室で確立した方法により子宮内膜組織培養を行った。CCL1を培養液に添加し、24 時間後の培養上清中 PGE2 ならびに PGF2α濃度を酵素免疫測定法により測定した結果、いずれもCCL1によって増加することが明らかとなった。また、CCL1の受容体であるCCR8発現を免疫組織化学染色法で調べた結果、子宮内膜上皮細胞と腺上皮細胞にその発現が認められたことから、CCL1がこれら受容体を介して牛子宮内膜のPG合成を促進することが示唆された。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

実験遂行に必要不可欠である供試牛を確保し、それらから採取した血液や子宮内膜組織を用いた一連の実験も滞りなく進めることができていることから、本研究は順調に進捗していると判断できる。

Strategy for Future Research Activity

当初研究計画に従って実験を行い、順調に成果を得ているため、今後も計画通りに研究を進める予定である。具体的には、１）牛子宮内膜や白血球のケモカイン発現におよぼす胚由来インターフェロンτの影響、２）牛子宮内膜や白血球の機能制御におよぼすケモカインの生理作用機構の解明を行うため、セルソーターを用いて白血球を単球、顆粒球、リンパ球に分けて採取する手法の確立や牛子宮内膜上皮細胞と間質細胞の採取と凍結保存を進め、次年度以降の研究推進の加速化を図る。

Causes of Carryover

血液や培養上清中プロスタグランジン等のホルモン濃度を測定するためには、市販の測定キットを用いる必要がある。１キット当たり測定できる最大サンプル数は決まっていて、さらにこれらのキットには使用期限が存在する。そのため、本研究で採取する全てのサンプルを一度に効率的に測定するためには、次年度に測定キットを購入した方が適当と判断されたことから、次年度使用額が生じることとなった。なお、全体の研究遂行に遅延などの問題は生じない。