2018 Fiscal Year Research-status Report
Does antioxidant substance concentration of dairy cows relate to the risk of mastitis?
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17K08063
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒川 勇三 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30194632)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グルタチオン / 抗酸化物質 / 乳牛 / 乳房炎 / 血液代謝産物 / 生存時間解析 / 尿酸 / 泌乳ステージ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、血中抗酸化物質濃度に影響を及ぼす可能性のある要因として、泌乳ステージ(分娩前後)と夏季暑熱に着目して、試料採取と解析を行った。ここで得られたデータと2017年度に得られたデータとを合わせて、健康時の尾動脈の血中抗酸化物質の中から、乳房炎の発症リスクと関連する可能性が高いものを抽出する第1段階として、血中抗酸化物質濃度と肝機能指標である血中代謝産物濃度について、分散分析を行って泌乳ステージ(乾乳、分娩後日数)の影響が有意でない項目を抽出した。これは、乳牛のライフサイクルにわたり、安定的に乳房炎発症と関連する指標を見出すためである。ここで抽出された項目の高低が、分娩後の乳房炎発症率とどのように関連するかを、統計処理ソフトRによる生存時間解析の手法を用いて解析した。 全血中のグルタチオン(GSH)濃度は、8月の夏季暑熱時には11月と比べて高い傾向(P<0.1)を示し、分娩2週間後に低下する傾向(P<0.1)を示した。夏季暑熱時の酸化ストレス発生に対する代償的な反応により抗酸化物質のGSHが増加した可能性がある。同時に低下が認められた肝機能との関連でGSHが低下した可能性もある。2017年度から2018年度までのデータをすべて込みにして、泌乳ステージの影響を分散分析により解析したところ、GSHを含め、尿酸(UA)、ビタミンC(VitC)の血中抗酸化物質濃度に対する効果は有意ではなかった。生存時間解析の結果から、血中GSH濃度が高いほうから70%の牛群は、低いほうから30%の牛群より有意に乳房炎非発症率が高く推移した(P<0.05)。また、血中UA濃度の高い牛群において、乳房炎非発症率が低く推移した(P<0.05)。VitCと乳房炎非発症率との関係は認められなかった。これらの結果から、GSHが低い乳牛、およびUAが高い乳牛で、乳房炎発症率が高くなることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は、乳牛の血中抗酸化物質や代謝産物の濃度が、将来の乳房炎発症に及ぼす影響を明らかにして、乳房炎予防対策の立案に貢献することである。本研究で乳房炎発症と血中抗酸化物質濃度との関連性を明らかにする中心的な手法として、生存時間解析を30年度に実施し、2017年度、2018年度の2年間で得られたデータを用いて解析を行ったところ、GSHおよびUA濃度と、乳房炎発症率との関連性を示唆する結果を得た。これらの抗酸化物質はいずれも、乳房炎の予防にかかわる白血球の殺菌作用で発生する過酸化水素に由来する酸化ストレスの防止にかかわることを示唆する報告がある。しかし、本研究の中では、直接的に関連するメカニズムについて明らかにできておらず、それぞれの抗酸化物質の血中濃度が高いことが、将来の乳房炎の予防に関連するのか、過去の乳房炎の発症に関連するのかを明確にする必要がある。 一方、GSHの血中濃度は、夏季暑熱の影響を受けて高まる可能性が示唆され、また分娩直後に低下する可能性も示唆された。したがって、乳房炎発症との関連を、どの季節、あるいはどの泌乳ステージのGSH濃度を用いて解析すべきかについての検討の必要性が明確となった。ただし、夏季暑熱および泌乳ステージの影響のいずれも、有意水準が10%未満であり、明確な有意性は得られなかったことから、さらなるデータ蓄積の必要性が示された。 また、GSH、VitCおよびUA以外の血中代謝産物濃度については、泌乳ステージの影響が認められたため、2018年度は生存時間解析には供しなかった。2018年度までの生存時間解析では、泌乳ステージの影響を取り込んだモデルとなっていないため、さらなる改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度も、乳牛の血中抗酸化物質濃度、代謝産物濃度、乳生産、疾病履歴等データの蓄積を継続して、より精度の高い生存時間解析に向けた、モデルの検討を行っていく。そのために必要な、血中抗酸化物質濃度、代謝産物濃度、乳房炎発症に対する、夏季暑熱、泌乳ステージ(分娩前後)といった要因の影響をより明確に解析できるような、データの収集方法をとる。 まず、夏季暑熱の影響を解析するために、5月から11月までほぼ月1回、10頭以上の泌乳牛からの試料採取を行う。試料として尾動脈血、乳を採取し、血中抗酸化物質(GSH、VitC)濃度、代謝産物濃度、体細胞を含む乳中成分を分析する。同時に飼料摂取量、BCS等を記録する。月ごとのデータを得ることにより、春から高温となる夏を経て、気温の低下する秋に至る時期までの、血中抗酸化物質濃度、暑熱の指標となるといわれる血液代謝産物濃度の推移を見ていき、農場で記録されている疾病発症の月ごとの頻度と照らし合わせて考察に供したい。 また、分娩前後の上述と同じ血液中成分の変化のデータもさらに蓄積しつつ、肝臓中のGSH濃度を増加させる効果が報告されているバイパスメチオニンの飼料添加が、血中GSH濃度に及ぼす影響を解析して、血中抗酸化能を飼料給与により増加させることにより、疾病予防に応用する手法を検討したい。 上述の手法で収集したデータと2018年度までに収集したデータをもとに、GSH等抗酸化物質の血中濃度を要因として組み込んだモデルを用いた生存時間解析について検討する。
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Causes of Carryover |
残額が少なく、購入すべき適切な物品がなかったため、2019年度に使用することとした。
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Research Products
(1 results)