2018 Fiscal Year Research-status Report
損傷筋線維除去システムにおける酸化タンパク質の種類と役割
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17K08067
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
岩崎 智仁 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (30305908)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 筋損傷 / 損傷筋除去 / 酸化タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋の損傷に伴って,損傷筋線維中のタンパク質は酸化される.この酸化タンパク質の発生が筋再生に重要であると仮説を立てて研究を進めている.これまでに数種類の酸化タンパク質(ニトロシル化,カルボニル化タンパク質,酸化型SH基含有タンパク質,ならびにジチロシン等)がmdxマウスの損傷筋繊維に発現していることを明らかにした.平成30年度では,酸化タンパク質と内在性プロテアーゼの局在部位の確認を行い,酸化タンパク質の発現部位にカルパインならびにカテプシン類が発現していることが明確に示された.またそれら内在性プロテアーゼ活性は筋損傷の程度が高くなり,酸化タンパク質量が増えると増加することも明らかとなった.筋損傷時に発現する酸化タンパク質の種類については損傷のステージ(損傷初期,後期)によって発現種が異なることも明らかにすることができた.さらに,それらの酸化タンパク質を各種抗体を用いたwestern blottingで検出したところ,損傷筋試料においては複数種のバンドが確認できており,免疫組織化学染色結果と一致した.酸化タンパク質の多いmdxマウスの筋タンパク質はin vitroでのプロテオリシス処理でも分解されやすいことが示された.また,検討中であった酸化タンパク質の電子顕微鏡レベルでの局在観察に係る新手法の開発においては,酸化タンパク質の修飾と灌流固定を併用することで酸化タンパク質の保護と微細構造の保持の両者を一定レベルで両立することが可能となり,光学顕微鏡による予備的観察では極めて良好な結果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた内在性プロテアーゼと酸化タンパク質の局在観察,内在性プロテアーゼの活性,ならびに酸化タンパク質のin vitroプロテオリシス解析については,当初の計画通り順調に解析が進んでおり,損傷筋における酸化の種類やその程度と内在性プロテアーゼの関わりの理解が進んだ.特に損傷のステージにおいて酸化タンパク質の種類に差異があることが明確になったことは,酸化タンパク質に何らかの生理的意義があることを示唆していると考えられ,本研究課題の目的に即した結果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では,これまでの知見を畜産業界に還元すること目的の1つにして研究を展開する.全世界のブロイラー業界で問題となっている異常硬化胸肉の発現は異常な筋肥大に伴う酸化ストレスが直接の原因であると仮説を立てている.異常硬化を発現する鶏の胸肉の酸化ストレスレベルを推定するために,酸化ストレスのマーカーであるリポフスチンの蓄積量やこれまでの知見で明らかになった酸化タンパク質種の発現について調査を進める.また,酸化タンパク質の電子顕微鏡レベルでの局在観察についても改良と検討を進め新規手法の開発に努める.
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