2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K08072
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
古林 与志安 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20301971)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子牛 / 神経疾患 / 周産期脳障害 / 大脳皮質壊死 / 小脳皮質変性症 / 病理 / 免疫組織化学 / DNAマイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
新生子仮死に起因する中枢神経病変についての体系的な研究はなされておらず、未解明のままである。また、小脳皮質変性症のような同様の病理像を呈するものの、原因や病理発生機序が明らかになっていない疾患も多く存在する。そこで本年度は、新生子牛の大脳皮質層状壊死の病態・病理発生機序の解明および小脳皮質変性症の病態・病理発生機序の解明に力点を置いて研究を実施した。新生子牛の大脳皮質層状壊死については、詳細な病理組織学的並びに免疫組織化学的検索を行い、疫学的・臨床的な情報も加味して、ウシにおいてもヒトやその他の動物と同様に周産期脳障害の表現型として、大脳皮質層状壊死が存在することを明らかにした。また、その病変把握の方法として、神経細胞傷害マーカーである Fluoro Jade C による染色および変性軸索マーカーである Alzheimer precursor protein に対する免疫染色が有用であることを示した。小脳皮質変性症に関しては、検索4例全例で、プルキンエ細胞の脱落、torpedo 形成、empty basket 出現、および分子層の菲薄化と空胞形成が特徴的であった。また、calbindin D 免疫染色ではプルキンエ細胞の減少が、IbaI 免疫染色ではプルキンエ細胞脱落部および非脱落部でのミクログリアの多結節状集簇が共通して観察された。また、カスパーゼ3抗体を用いた免疫染色では、いずれの症例においても陽性プルキンエ細胞は認められなかった。以上の所見から、検索4例は一連の疾患であると考えられた。パラフィン切片を用いて実施した DNA マイクロアレイ解析では、全例で信頼性の高い検討が実施できた遺伝子では、4倍以上の up-regulation がみられた遺伝子が1つ、down-regulation がみられた遺伝子が4つ得られ、今後これらの意義について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の目的は、1)体系的な研究が行われていない子牛の周産期脳障害に焦点を当て、病理像をその病理発生機序とともに明らかにすること、2)小脳皮質変性症のような、同様の病理像を呈する未解明疾患の病理発生機序を解析すること、および3)日常の症例収集の中から、新たな病態を探索し、その病理像と病理発生機序を明らかにすることである。本年度は、1)新生子牛の大脳皮質層状壊死の病態・病理発生機序の解明、および2)小脳皮質変性症の病態・病理発生機序の解明に力点を置いた研究を計画した。上述の通り、本年度の研究では、ウシにおいてもヒトやその他の動物と同様に周産期脳障害の表現型として、大脳皮質層状壊死が存在することを明らかにするとともに、子牛の小脳皮質変性症の病理組織学的、免疫組織化学的特徴像を明らかにした。また、結果の解釈は完了していないものの、パラフィン切片を用いて DNA マイクロアレイ解析を計画通り実施し、全例で信頼性の高い検討が実施できた遺伝子の中では、4倍以上の up-regulation がみられた遺伝子が1つ、down-regulation がみられた遺伝子が4つ得られた。また、子牛の新規未解明神経疾患を見出すために、臨床獣医師と協力して新規病態の探索を継続して実施している。従って、全体として研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究全体の目的は、1)体系的な研究が行われていない子牛の周産期脳障害に焦点を当て、病理像をその病理発生機序とともに明らかにすること、2)「小脳皮質変性症」や「明瞭な形態変化を伴わない神経疾患」のような、同様の病理像を呈する未解明疾患の病理発生機序を解析すること、および3)日常の症例収集の中から、新たな病態を探索し、その病理像と病理発生機序を明らかにすることである。H30年度以降はH29年度に検討した疾患について、さらなる病理発生機序解析を行うとともに、H29年度に検討を実施できなかった疾患に対象を広げて検討を実施する。つまり、1)の子牛の周産期脳障害については、両側対称性脳軟化(基底核壊死)の病態・病理発生機序の解明を行うとともに、H29年度に扱った大脳皮質壊死症例を加えて、これら病態の病理発生機序解析を行う。また、2)については、「小脳皮質変性症」で特異的に変動がみられた遺伝子に関する検討を行うとともに、「明瞭な形態変化を伴わない神経疾患」の病態・病理発生機序を他の疾患と同様の方法を用いて実施する。また、3)についても臨床獣医師と協力し、日々実施している病理診断の中から子牛の新規未解明神経疾患の探索を併行して行い、他の疾患に準じた検討を実施する。
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Causes of Carryover |
(理由)成果発表(学会発表)のための経費を計上していたが、出張旅費を別予算から支弁することができたため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)H30年度は研究の対象となる疾患が増え、消耗品費を多く必要とする検討も増える。また、複数の論文発表を予定しており(印刷中のものあり)、投稿料や校閲費が増える予定である。従って、次年度使用額となった分については、これらのことを遂行するために、H30年度予算と合わせて有効に活用する。
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Research Products
(6 results)