2017 Fiscal Year Research-status Report
牛寄生Eimeria属原虫の種識別法の開発と牛コクシジウム症診断への応用
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17K08073
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
板垣 匡 岩手大学, 農学部, 教授 (80203074)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛 / Eimeria / コクシジウム / ITS2 / 種識別診断法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本における牛寄生Eimeria属原虫の種識別法を開発し、牛コクシジウム症の新たな診断法を確立することを目的とする。今年度は牛寄生Eimeria属10種について、核リボソームITS2領域の塩基配列を決定し、その配列の違いに基づいた識別の可能性について検討した。まず日本各地から牛糞便を入手し、ショ糖浮遊法によりオーシスト検査を行い、陽性検体からオーシストを回収して培養し、スポロゾイト形成オーシストとした。形態学的特徴から種を同定した、単一オーシストから全DNAを抽出し、nested-PCR法によりITS2領域を増幅した。増幅産物はダイレクトシークエンスまたはTAクローニングにより塩基配列を決定した。その結果、ITS2領域の塩基配列はEimeria種で大きく異なり, 塩基数は389bp (E. bukidnonensis) - 675bp (E. cylindrica), 塩基相同性は種間で49.1-87.6%,種内で77.1-100%であり, すべてのEimeria種に種内変異あるいは個体内変異がみられた. 近隣結合 (NJ) 法による系統樹では, Eimeria spp. は3つのクラスター (A, B, C) に分かれ, クラスターAはE. bovis, E. ellipsoidalis, E. zuernii, クラスターBはE. auburnensis, E. cylindrica, E. canadensis, E. wyomingensis, クラスターCはE. alabamensis, E. bukidnonensis, E. subsphericaより形成された. また, すべてのEimeria種が単系統群のクレードを形成した. 以上のことから, ITS2領域は種同定マーカーとして有用であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の牛には13種のEimeria属原虫の寄生が知られているが、今年度の研究ではその内の10種を検出することができ、それらの核リボソームDNAITS2領域について塩基配列を決定した。塩基配列は種内変異が見られるものの、種間変異が大きいことから種間配列の違いを利用した種識別マーカーへの応用が可能であると考えられたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に向けては、さらに多くの牛糞便を入手して検査することで今年度検出できなかったEimeria属3種のオーシストとその全DNAを得ることを進めるとともに、Eimeria属13種のITS2領域の塩基配列に基づいた種特異的PCRプライマーの開発を進め、さらに種特異的PCRプライマーを用いた種識別法の開発を目指す。
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