2018 Fiscal Year Research-status Report
外来遺伝子高発現オルソブニヤウイルス作出技術の確立に関する研究
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17K08074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上間 亜希子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (20630156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀本 泰介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00222282)
村上 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10636757)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 改変型AKAV / 転写プロモーター活性の増強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、外来遺伝子高発現オルソブニヤウイルス作出技術の確立である。外来遺伝子として容易に検出できるGFPを用いて、これを効果的に発現するアカバネウイルス(AKAV)の作出を試みる。 平成29年度までに、蛍光発現AKAV(eGFP-AKAV)のS分節5′ UTRの3′側領域の79~83塩基を欠損させた5種類のウイルス(eGFP-AKAV/42、eGFP-AKAV/41、eGFP-AKAV/40、eGFP-AKAV/39、eGFP-AKAV/38)が作製できた。このうち、eGFP-AKAV/42とeGFP-AKAV/38を用いて、培養細胞レベルで親株(eGFP-AKAV)および野生株との性状比較を行った。eGFP-AKAV/42とeGFP-AKAV/38は感染後、親株よりも蛍光が早く検出できた。両ウイルスとも10代継代しても蛍光を保持しており、特にeGFP-AKAV/38は継代後もその保持率はほぼ100%であった。またeGFP-AKAV/38 はGFP発現ウイルスの中で増殖速度が一番早く、プラックの大きさは野生株と同等であった。 5′ UTRを欠損させたことによるアンチゲノムからの転写プロモーター活性の変化を調べるために感染細胞を用いてリアルタイムPCRを行なったところ、eGFP-AKAV/38は親株に比べてアンチゲノムから転写されるGFP mRNA量が増えていた。またノーザンブロッティングの結果から、アンチゲノムからゲノムへの複製が増強されていることが分かった。これまでに、同じオルソブニヤウイルスのブニヤンベラウイルスで、S分節の5′ UTRを削ると転写・複製効率が下がるというミニゲノムアッセイの報告があるが、本研究結果では転写・複製効率が上がるという逆の結果となっており、感染性ウイルスでは異なることが示唆された。これはオルソブニヤウイルスのUTRに関する新たな知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画は、回収できた改変型組換えAKAVのin vitroでの性状解析をすることであった。 1.増殖性について: eGFP-AKAV/42とeGFP-AKAV/38、および親株と野生株ウイルスを用いて感染細胞で増殖曲線、プラックの大きさを調べた。 2.蛍光発現時期の解析:eGFP-AKAV/42、eGFP-AKAV/38、親株、野生株をmoi=0.01でHmLu-1細胞に感染させ、感染24時間後および48時間後の蛍光を観察した。また、蛍光免疫染色でAKAV感染領域における蛍光発現率を調べた。 3. 安定性について:eGFP-AKAV/42、eGFP-AKAV/38および親株を10代まで継代し、蛍光検出できたプラック率を継代数ごとに比較して、挿入遺伝子が安定して発現しているかを調べた。 4. 培養細胞でのゲノムの転写能の検討:蛍光発現時期の違いについて、その原因解明のためにGFP mRNA量をノーザンブロッティングで調べる予定であったが、GFP mRNAの発現量が少なく検出不能あったため、リアルタイムPCRを行った。反応産物がGFPゲノムではなくmRNAであることは、反応液を電気泳動し検出したバンドの長さで確認した。その結果、eGFP-AKAV/38は親株に比べて外来遺伝子の転写が増強していることが分かった。以上、1.~4.の前年度に計画した実験は全て網羅しており、本研究は当初の計画通りに順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
eGFP-AKAV/38を用いてin vivoでの詳細な解析を行い、動物体内でのAKAVの可視化(in vivoイメージング)としての有用性を検討する。 最終年度に当たる平成31年度は、作出したウイルスのin vivoでの性状を動物実験を行い解析する。蛍光を最も効果的に発現するeGFP-AKAV/38をマウスに感染させ、親株および野生株との病原性を比較する。新生子マウスに腹腔内接種し、一日一回以上症状と生死を観察し生存曲線を描く。マウスに致死性を示した場合、瀕死期に開腹し臓器(腹腔内臓器、胸腔内臓器、脊髄、脳など)を蛍光実体顕微鏡で観察する。致死性を示さない場合でも、感染後、継時的に解剖し、同じく蛍光実体顕微鏡で蛍光検出を試みる。
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Research Products
(1 results)