2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of steatosis-related preneoplastic liver lesion using markers for autophagy
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17K08075
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉田 敏則 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80726456)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 病理学 / 癌 / 脂質 / 細胞・組織 / 脂肪肝 / 前がん病変 / オートファジー / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は過食、運動不足などストレス社会に生きる現代人の健康を脅かす重要な疾患のひとつである。その罹患者は世界的に増加しつつあり、また、一部は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から、線維化を経て、肝がんを発症することが危惧されている。本研究では、比較的短期間で初期肝発がん過程の観察が可能なラット肝中期発がん試験法に高脂肪飼料を用いた脂肪肝モデルを組み合わせることで、NAFLDの病態を想定した初期肝発がんに至る経路の観察が可能な実験モデルを構築した。脂肪肝関連肝発がんの制御機構として酸化ストレス発生源であるNADPHオキシデース及び細胞内小器官制御系であるオートファジーに着目し、オートファジー制御候補物質メトロニダゾール並びにNADPHオキシデース抑制剤アポシニンを投与し、脂肪肝関連肝前がん病変の挙動を解析した。 その結果、高脂肪飼料により肥満及び脂肪肝を含むNAFLDの病態が確認され、NADPHオキシデース構成分子p22phoxの発現増加を伴う肝前がん病変が観察された。メトロニダゾールはオートファジーマーカーLC3及びDNA二本鎖切断指標γ-H2AXの発現を伴う肝前がん病変を増加させ、酸化ストレス指標となる抗酸化酵素の遺伝子発現増加も伴っていた。アポシニンは前がん病変の増減には明らかな影響を及ぼさなかったが、Lc3及びAtg7を含むオートファジー関連遺伝子発現を変動させ、前がん病変の細胞増殖活性を抑制した。以上より、NADPHオキシデースの発現を伴う脂肪肝関連初期肝発がんモデルにおいて、メトロニダゾールはDNA傷害、酸化ストレス及びオートファジーに関連した肝前がん病変形成研究に、アポシニンは前がん病変における細胞増殖とオートファジーの関連性を研究するのに有用な候補物質であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット肝中期発がん試験法に高脂肪飼料を用いた脂肪肝モデルを組み合わせ、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を想定した脂肪肝関連初期発がん過程を観察できる有用なモデルを構築した。さらに、本研究の目的のひとつであるNADPHオキシデースの発現の関与する肝前がん病変も観察することができた。初年度用いたメトロニダゾールを当初、オートファジーの抑制物質として考えていたが、肝前がん病変の増加に関連してオートファジー関連分子の発現増加が確認され、オートファジーの寄与する脂肪肝関連肝前がん形成研究に有用な候補物質であることが見いだされた。さらに、その過程には肝発がん過程に重要なDNA傷害と酸化ストレスに関与することも明らかとなった。NADPHオキシデース抑制剤として広く用いられているアポシニンはオートファジー関連遺伝子を変動させ、当初の計画通りNADPHオキシデースとオートファジーとの関連性を研究する有用な物質であることが明らかとなった。使用予定であったオートファジー抑制剤クロロキンは次年度使用予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪肝関連初期発がんモデルにおいてオートファジーの抑制剤としてクロロキン、オートファジー促進剤アミオダロン等を投与し、オートファジーと肝発がん過程の関連性を検討する。モデルについては、脂肪肝関連初期発がんモデルを糖尿病あるいは肝臓への炎症波及を増強する処置を付加し、メタボリックシンドロームあるいは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を想定した動物モデルへ発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の旅費及び人件費が予定より少なかったたため、翌年度に国内・外国旅費を含めて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)