2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of steatosis-related preneoplastic liver lesion using markers for autophagy
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17K08075
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉田 敏則 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80726456)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 病理学 / 癌 / 脂質 / 細胞・組織 / 脂肪肝 / 前がん病変 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、比較的短期間で初期肝発がん過程の観察が可能なラット肝中期発がん試験法に高脂肪飼料を用いた脂肪肝モデルを組み合わせることで、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から初期肝発がんに至る経路の観察が可能な実験モデルを構築し、オートファジー抑制剤クロロキン及びオートファジー促進剤アミオダロンを用いて、NAFLD関連肝前がん病変進展におけるオートファジーの役割を検討した。 高脂肪飼料により肥満及び脂肪肝を含むNAFLDの病態が確認され、細胞増殖指標Ki-67の発現増加を伴う肝前がん病変が観察された。肝前がん病変ではオートファジー指標p62及びLC3の発現がみられた。クロロキン投与により、肝前がん病変におけるLC3の減少傾向とp62/LC3発現比が増加した。アミオダロンでは、p62/LC3発現比の減少傾向がみられ、オートファジー関連遺伝子Atg5の発現増加を伴っていた。前がん病変の定量解析では、クロロキン投与では明らかな変動はなかったが、アミオダロン投与では前がん病変の数が減少した。 本研究において、肝前がん病変におけるp62及びLC3発現比を解析することで、オートファジーの進行過程(フラックス)の解析が可能であることが示され、クロロキン投与では、オートファジーの早期抑制が示唆される結果が得られた。一方、アミオダロン投与ではオートファジーの誘導が示唆された。以上より、当該試験条件下では、オートファジー誘導により肝前がん病変が抑制されることが示唆されたが、オートファジー抑制による肝前がん病変への影響は明らかでなかった。オートファジーの解析にあたり、オートファジー指標の発現が前がん病変によって多様であり、データにばらつきが大きい点が検討課題として挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、ラット肝中期発がん試験法に高脂肪飼料を用いた脂肪肝モデルを組み合わせ、脂肪肝関連肝発がんの制御機構として酸化ストレス発生源であるNADPHオキシデース及び細胞内小器官制御系であるオートファジーに着目し、オートファジー制御候補物質メトロニダゾール並びにNADPHオキシデース抑制剤アポシニンを投与し、脂肪肝関連肝前がん病変の挙動を解析した。メトロニダゾールはオートファジー指標LC3の発現を伴う肝前がん病変を増加させ、酸化ストレス関連遺伝子発現増加も伴っていた。アポシニンは前がん病変の増減には明らかな影響を及ぼさなかったが、Lc3及びAtg7を含むオートファジー関連遺伝子発現を変動させ、前がん病変の細胞増殖活性を抑制した。 平成30年度では、オートファジーの研究において広く使用されているオートファジー抑制剤クロロキン及びオートファジー促進剤アミオダロンを用いて、オートファジー指標p62及びLC3の発現解析を行った。p62/LC3比を求めることで、当初予定していなかったオートファジーフラックスを想定した解析まで進めることができた。オートファジーフラックスの解析はウェスタンブロッティン等により行われることが多いが、免疫染色でp62及びLC3の局在と発現比を検討することで、前がん病変などの微小な病変巣におけるオートファジーの進行過程(誘導、早期あるいは後期抑制)を解析できることが示唆された。ただし、オートファジー抑制を示唆するp62/LC3比の増加がクロロキンで検出されたが、前がん病変の数・大きさへの影響は明らかではなく、オートファジー促進傾向を示すアミオダロンで前がん病変が減少した。これらの結果は前がん病変におけるオートファジーの挙動に多様性があるため、データにばらつきが多きことが原因として挙げられ、解析方法をさらに検討する必要性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪肝関連初期発がんモデルを用いてヒトのNAFLDモデルを構築し、オートファジーを制御すると考えられるカルバマゼピン、ベラパミル、ジメトリダゾール等を投与し、p62/LC3比を中心としたオートファジーフラックスの解析を通してオートファジーと肝発がん過程の関連性を検討する。モデルについては、脂肪肝関連初期発がんモデルを糖尿病あるいは肝臓への炎症波及を増強する処置を付加し、メタボリックシンドロームあるいは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を想定した動物モデルへ発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の旅費が予定より少なかったたため、翌年度に国内・外国旅費を含めて使用する予定である.
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Research Products
(2 results)