2018 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患における単純ヘルペスウイルス前初期タンパク質の関与の検証
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17K08079
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
富岡 幸子 鳥取大学, 農学部, 准教授 (50374674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 悦郎 九州大学, 医学研究院, 教授 (00160903)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス / 前初期タンパク質 / 疾患モデル動物 / 発生工学 / トランスジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
単純ヘルペスウイルス(HSV)は神経組織への親和性が高く、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患への関与が疑われているが、その因果関係については未だ不明な点が多い。研究代表者はこれまでに、HSVと近縁なブタヘルペスイルス1(仮性狂犬病ウイルス:PRV)の前初期タンパク質IE180が感染現象を伴わずタンパク質単独で神経細胞やグリア細胞、生殖系列細胞等に変性やアポトーシスを引き起こすことをトランスジェニックマウスを用いて明らかにしてきた。本研究ではこれらの背景や成績を踏まえ、IE180のホモログにあたるHSV ICP4タンパク質に着目し、ICP4を発現するトランスジェニック(Tg)マウスの作出とその病態解析を行うことで、ICP4が神経変性疾患等の病態の発現や増悪に関与することを検証することを目指している。 平成30年度は前年度までに作出・系統確立したloxP ICP4 Tgマウス4系統それぞれとCAGcreER Tgとの交配を継続し、ダブルトランスジェニックマウスloxP ICP4/CAGcreERを作出した。これらダブルTgマウス(成熟個体)にタモキシフェン添加飼料の自由摂餌によりタモキシフェンを経口投与することで、Cre loxPシステムによってTgマウスでのICP4発現を誘導し、病態解析を進めた。その結果、ICP4発現誘導マウスでは、肝細胞の変性・壊死・類洞への炎症性細胞浸潤および膵臓外分泌細胞の変性・壊死・細胞の脱落が認められ、ウイルス感染現象によらずICP4タンパク質が単独で哺乳類細胞に影響を及ぼすことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ICP4発現マウスでは肝臓や膵臓といった当初想定していなかった臓器・組織に強い病変が誘発され、神経病態の解析と並行してこれら臓器の病態解析も進める必要が生じたため。また、神経組織以外のこれらの病態が重度であるため、神経病態を検証するためには、ICP4の発現誘導方法等についてさらに検討する必要が生じてきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 当初想定していなかった組織であるが、肝臓や膵臓の病変についても、遺伝子発現や病理発生機序に関する解析を進め、ICP4による病態発現について明らかにする。 (2) タモキシフェンの投与によらず、胎生期よりICP4を発現するダブルトランスジェニックマウスを系統交配により作出し、病態解析を進める。 (3) 神経系組織特異的なプロモーター下でICP4を発現するダブルトランスジェニックマウスを系統交配により作出し、病態解析を進める。 (4) 薬剤誘発による神経変性疾患モデル作出方法を適用して、ICP4の発現が神経変性疾患の発症や病態進行に影響するか検証する。
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Causes of Carryover |
理由:トランスジェニックマウスの繁殖状況により、遺伝子型判定・表現型解析に供した個体数が当初の予定より少なくなり、これに伴い酵素類・交代類等の消耗品や飼育にかかる費用も当初予定より若干少なくなったため。 使用計画:平成31年度以降も、解析の中心はトランスジェニックマウスであり、これらマウスの系統維持・遺伝子型判定等を継続・推進するため、次年度予算と合わせて適切に使用する。
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