2018 Fiscal Year Research-status Report
狂犬病ウイルスによる自然免疫回避機構の新概念「ストレス顆粒形成抑制」の分子基盤
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17K08083
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
正谷 達謄 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (70614072)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 狂犬病 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ウイルス自然免疫に重要なウイルスセンサー蛋白質・RIG-Iは、ウイルスRNAを捕捉するにあたりストレス顆粒(Stress granule)とよばれる構造に集積することで、ウイルスセンサーとして機能することが明らかとなり、注目されている。狂犬病ウイルス弱毒株(Ni-CE株)感染細胞ではSGが形成され自然免疫応答が発動するのに対し、強毒株(西ヶ原株)感染細胞ではストレス顆粒がほとんど形成されない。前年度の研究では、どの遺伝子がストレス顆粒抑制に関わるか明らかにするため、西ヶ原株の遺伝子を一つずつNi-CE株のものに置換したキメラウイルスを作出した。その結果、M遺伝子がNi-CE株のもののみ、感染細胞にストレス顆粒を形成したため本年度はM遺伝子の機能の違いに注目して研究を実施した。その結果、Ni-CE株及び西ヶ原株のゲノムのうちM遺伝子をNi-CE株のものに置換したキメラウイルスNi(CEM)株が、感染細胞に細胞死を引き起こすのに対し、西ヶ原株は起こさないことを確認した。興味深いことに、Ni-CE株のM遺伝子を持つ株(Ni-CE株、Ni(CEM)株)は強い細胞膜破壊を誘導するのに対し、西ヶ原株及びNi-CE株のゲノムのうちM遺伝子を西ヶ原株のものに置換したキメラウイルスCE(NiM)感染では、アポトーシスの特徴であるホスファチジルセリンの反転は引き起こすものの、細胞膜破壊の程度が低かった。すなわち、M遺伝子はSG形成だけでなく細胞死シグナルにも何らかの影響をもたらしている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
狂犬病ウイルスM遺伝子の機能について、細胞死シグナルへの影響を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
M遺伝子にコードされるM蛋白質の関与する細胞死シグナルとSG形成能のクロストークについて、分子レベルで明らかにする。具体的には、M蛋白質が関与する細胞死シグナルパスウェイを特定するとともに、SG形成シグナルとの関与を考察していく。一方、細胞死誘導とSG形成が関与しない独立した事象である可能性も考慮し、SG形成シグナルについてもM蛋白質単独発現系など用いて追求していく。また、動物実験によってM遺伝子キメラウイルスが宿主に及ぼす影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
物品費として予定していた抗体・酵素について、前年度に購入したもので充足したため。次年度は最終年度のため、論文投稿にかかる費用(英文校閲、掲載料)にも充てていく。
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Research Products
(4 results)