2018 Fiscal Year Research-status Report
Application of whole genome sequence analysis for the risk assessment of Shiga Toxin producing Escherichia coli derived from deer
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17K08087
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
壁谷 英則 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10318389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 栄二 千葉県衛生研究所, 細菌研究室, 室長 (40370895)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 志賀毒素産生大腸菌 / O157 / 鹿 / 猪 / PFGE / 全ゲノム解析 / 病原遺伝子 / ジビエ |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年9月から2018年8月にかけて、19県の鹿429頭、9県の猪267頭、ならびに1県の農場2ヶ所(A,B)の牛21頭の直腸便を供試した。O157の分離は、糞便0.5g量を4.5mLのノボビオシン加mEC培地に接種して42℃で18時間増菌培養後、クロモアガーO157培地、CT-SMAC培地に塗抹し37℃、24時間培養した。各培地上のO157を疑うコロニーを回収し、PCRによりstx遺伝子が陽性かつrfbE O157遺伝子を保有し、O157スライドラテックス凝集反応で陽性となった株をO157と同定した。O157分離株については、XbaⅠを用いたPFGE解析、LSPA-6解析、ARMS-PCR解析による系統解析を行った。一部の株については次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析を行い、VirulenceFinder 2.0、ResFinder 3.0により病原関連遺伝子と薬剤耐性遺伝子を網羅的に解析した。 本研究では、鹿の1.9%(8/429頭)、猪の1.1%(3/267頭)からO157が分離された。stxバリアントは猪由来2株がstx2c、1株がstx1a+stx2cで、いずれもeaeA(+)、hlyA(+)であった。O157を保菌していた猪が捕獲された付近の農場A,Bの牛では、農場Bの牛1頭からO157が1株分離された。これまでに我々が分離した全てのO157分離株(鹿9株、猪3株、牛1株)をPFGE解析した結果、猪3株は全て異なるパターンを示した。一方、牛1株は猪1株とパターンが一致した。鹿由来株は5パターンに分類され、いずれも猪、牛由来株とは異なるパターンであった。猪由来2株の全ゲノム解析では、それぞれ5,294,527bp、5,365,233bpの塩基配列が決定され、2株ともに22個の病原関連遺伝子と、1個(mdf)の薬剤耐性遺伝子が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに鹿や猪から分離した志賀毒素産生大腸菌のうち、血清型O157であったものを対象として、PFGE解析や、全ゲノム解析を行った。平成29年度までに、従来から継続してきた志賀毒素産生大腸菌を継続的に分離してきたが、平成30年度に新たに、①前年度分離した猪由来志賀毒素産生大腸菌O157の由来を検討することを目的とし、当該猪が捕獲された地域周辺の牧場で飼育されていた牛から同菌を分離し、比較検討することで、猪と牛の間で同菌が伝播していた可能性を示した。②これまでの鹿由来志賀毒素産生大腸菌O1572株に加え、さらに猪由来O157や牛由来O157の全ゲノム解析を実施することができた。これらの課題は、平成29年度末の「今後の研究の推進方策」において掲げた課題であり、実際に実施することができた。また、一連の網羅的病原関連遺伝子解析の実施に加え、薬剤耐性遺伝子の網羅的解析も実施することができた。最終年度は、これらの成績を投稿論文として取りまとめると同時に、鹿、および猪由来の血清型O157以外の志賀毒素産生大腸菌分離株についても同様に、全ゲノム解析を用いた網羅的病原関連遺伝子解析を実施することを計画している。 以上から、本研究課題の研究目的に対して、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、引き続き、検体収集、志賀毒素産生大腸菌の分離培養、生化学性状解析を継続して実施する。研究協力団体の協力を得て、広く地域的にこれまでに検討できなかった地域における検体を収集することに注力する。特に、志賀毒素産生大腸菌の中でも、従来病原性評価の困難であったO157以外の血清型を示す分離株に着目し、全ゲノム解析による網羅的な病原関連遺伝子の探索を実施することを計画している。 これらに加え、全ゲノム情報を用いた系統解析を実施することを計画している。従来の特定の遺伝子を標的とした系統解析に比べ、格段に信頼性の高い解析が可能となる。本研究により、わが国の野生鹿や野生猪が保菌する志賀毒素産生大腸菌O157が、様々な家畜、あるいは人患者株と、どのような関係性があるのか、明らかにする。この解析のためには、家畜や人患者由来株の全ゲノム情報が必要となる。このため、当該研究を実施している研究者との共同研究体制の確立を図る。
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Causes of Carryover |
平成30年度において、全ゲノム解析の対象としたのは、志賀毒素産生大腸菌のうち、血清型O157の分離株に限定した。このため、全ゲノム解析に必要となる高額な一連の試薬の支出が予定よりも減額となった。次年度において、当該関連試薬の購入を行う予定である。 さらに、当初支出を計画していた、旅費、人件費の支出がなかったことも理由に挙げられる。平成31年度は、人件費を支出して、より効率的に各種作業を進めると同時に、研究成果の発表、ならびに研究材料の採材において、旅費を支出することを計画している。
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Research Products
(2 results)