2018 Fiscal Year Research-status Report
ハウスダストマイトによる腸上皮バリア障害を起点とした犬の慢性腸症発症機構の解明
Project/Area Number |
17K08099
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大森 啓太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (20466915)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 慢性腸症 / 犬 / ハウスダストマイト / 消化管 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究二年目である今年度は、第一に、消化管内ハウスダストマイトが腸上皮バリア機能に及ぼす影響を検討するため、健常犬由来腸粘膜組織をハウスダストマイトと培養し、オクルディンなどタイトジャンクション構成分子の遺伝子発現量を解析した。その結果、ハウスダストマイト培養群と対照(生理食塩水培養)群において遺伝子発現量に差は検出されなかった。次に、消化管内ハウスダストマイトが腸粘膜由来炎症性サイトカインの産生に及ぼす影響を明らかにするため、健常犬由来マクロファージをハウスダストマイトと培養し、犬の慢性腸症の腸粘膜において発現が上昇していることが報告されている炎症性サイトカインIL-1betaの遺伝子発現量を解析した。その結果、対照群に比べ、ハウスダストマイト培養群において、マクロファージからのIL-1beta遺伝子発現量が有意に増加していた。さらにこの効果は、システインプロテアーゼ阻害剤やLPS阻害剤により影響されず、セリンプロテアーゼ阻害剤により減少することから、ハウスダストマイトに含有されるセリンプロテアーゼの作用によりマクロファージからのIL-1beta産生が誘導されることが明らかになった。これらの結果から、犬の消化管内に存在するハウスダストマイトは、腸上皮バリア機能に影響を及ぼす可能性は低いが、腸上皮バリア機能が減弱した消化管においては、ハウスダストマイトが腸粘膜に存在するマクロファーアジからIL-1betaを産生させることで、慢性腸症の病態を悪化させる要因の1つになっている可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸上皮バリア機能に及ぼすハウスダストマイトの影響は確認できなかったが、これまでに報告されていない腸粘膜由来炎症性サイトカインの産生に及ぼすハウスダストマイトの効果を明らかにすることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、犬の消化管内にハウスダストマイトが存在し、ハウスダストマイトが犬のマクロファージからIL-1betaを産生させることを明らかにした。最終年度である次年度は、犬の腸管粘膜を用いたex vivo試験およびin vivo試験により、腸粘膜由来炎症性サイトカインに対するハウスダストマイトの作用をさらに詳細に解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた旅費、人件費および物品費(消耗品費)が予定していた金額より下回ったため次年度使用額が生じた。次年度は、今年度下回った旅費および人件費を使用予定であること、またex vivo実験およびin vivo実験を行う予定であることから、今年度分の物品費を次年度分と合わせて使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)