2017 Fiscal Year Research-status Report
体温制御システム構築の細胞分子基盤:ハムスターの恒温性獲得機構をモデルとして
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17K08118
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡松 優子 北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (90527178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 褐色脂肪 / 冬眠動物 / ハムスター / 脂肪細胞 / 生後発達 / 脱共役タンパク質 / 体温調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類動物の非ふるえ熱産生を担う褐色脂肪組織の機能は新生児期に重要であるため、ほとんどの動物において出生時には機能的な褐色脂肪組織が存在する。一方、シリアンハムスターは新生児期には体温が外気温により規定される外温性を示し、機能的な褐色脂肪組織を持たない。出生時には白色脂肪組織として存在し、出生後に褐色脂肪組織へと転換する。本研究では褐色脂肪組織の形成と恒温性の獲得が出生後に起こる特殊なモデル動物としてハムスターを用いて、褐色脂肪組織形成を制御する液性因子とシグナル経路を明らかにすることを目的とした。 今年度は、始めにハムスター褐色脂肪組織の形成機構を詳細に解析した。ハムスターの褐色脂肪細胞は前駆褐色脂肪細胞からの分化と白色脂肪細胞からの転換という2つの経路から生じることが明らかになった。これらの過程は、マウスなどで示されている「白色脂肪組織の褐色化」現象におけるベージュ脂肪細胞の出現過程に類似していたが、遺伝子発現の解析からベージュ脂肪細胞ではなく古典的褐色脂肪細胞であると考えられた。次に、ハムスターの褐色脂肪組織形成に環境温度が与える影響を検討した。環境温度の上昇は、前駆褐色脂肪細胞と血管内皮細胞の増殖を抑制し、褐色脂肪組織の機能を低下させた。しかし、褐色脂肪組織の形成そのものは抑制されなかった。これらの結果は2報の原著論文として公表した。 次に、褐色脂肪組織形成に関わる液性因子を明らかにするために、新生仔期のハムスターの組織より前駆褐色脂肪細胞と成熟脂肪細胞を単離して培養した。前駆褐色脂肪細胞は培養下では自発的に褐色脂肪細胞へと分化した。前駆細胞を培養した培地(Conditioned medium: CM)は前駆細胞の自発的分化を促進したが、成熟脂肪細胞を培養したCMは前駆細胞の分化を抑制した。これらの因子を明らかにするためにRNA-seq解析を行い検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定よりも早く研究計画が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予期していた通りに研究が進んでいるため、今後も予定通りに研究を進める。
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Causes of Carryover |
2月、3月分の動物施設利用料として使用する予定。
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