2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08125
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Research Institution | Yamagata Prefectural Yonezawa University of Nutrition Sciences |
Principal Investigator |
高橋 和昭 山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 教授 (80183440)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体防衛 / ニワトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はフィチン酸給与がニワトリ腸管免疫関連遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。フィチン酸はイノシトール類縁物質であり、IL-8産生抑制などフィチン酸は免疫に対して抑制的に作用すると考えられている。本試験では腸管免疫免疫に対する作用研究の一環として、フィチン酸給与がニワトリの腸管免疫関連遺伝子発現に対する作用を調査した。 ボリスブラウン雄初生ヒナに市販のヒナ用飼料または0.1%フィチン酸添加飼料を21日間給与した。0日、6日及び21日齢時に回腸末端とその中の腸管内容物及び血液を採取した。血液は血漿調製後、カルシウム、リン及び亜鉛濃度を比色法により測定した。また、免疫グロブリン(Ig)A及びG濃度をそれぞれELISA法により測定した。腸組織は総RNAを抽出し、市販のキットによりcDNA調製後、real-time PCR法により、抗原受容体であるトール様受容体(TLR)-2及び4、7、T細胞数の指標としてCD3、B細胞数の指標としてBu-1、炎症関連遺伝子としてIL-1β,IFN-γ,TL1A ,IL-6,IL-10及びIL-17発現量を測定した。 6日及び21日齢における体重、リン及び血漿亜鉛濃度はフィチン酸給与の影響を受けなかった。カルシウム濃度はフィチン酸給与により低下する傾向にあった。21日齢時腸管のTLR-2,4及び7mRNA発現量はフィチン酸給与により低下した。その他の炎症に関与する因子のmRNA発現量もフィチン酸給与により低い値を示した。一方、CD3、IL-2及びBu-1 mRNA発現量はフィチン酸給与の影響を受けなかった。血漿IgG及びIgA濃度はフィチン酸給与により低下する傾向にあった。これらのことからフィチン酸は腸管免疫関連遺伝子発現を低下させる因子であることを確認し腸管免疫を調査する物質として有用と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腸管免疫に関連する生物学的要因すなわち腸管免疫反応から、腸バリア機能に影響すると考えられる生物学的要因は探索できたが、環境要因である腸内細菌叢や物理化学的要因である腸管上皮細胞間のタイトジャンクションやムチン、抗菌ペプチドの測定完了まで至らず、平成29年度の研究目標を達成できなかったことが、本評価の主な理由である。なお、これらの分析は現在継続して実施している。本研究を通じて、腸管上皮細胞間のタイトジャンクションとムチンmRNA量と腸内微生物8種の測定のための条件を設定し、そのDNA標準品を生成した。
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Strategy for Future Research Activity |
また平成29年度に実施予定していた「孵化後の飼料給与制限が腸バリア機能に及ぼす影響」の動物試験を実施する。あわせて、フィチン酸給与による腸バリア機能の変化を再確認するための試験か、腸内細菌叢を変化させることが予想されるオリゴ糖の給与試験を行う予定である。また、平成29年度試験の未分析項目の測定と評価解析する予定である。T細胞の表面抗原であるCD3,4および8についてはニワトリ交差抗体を用いて測定する予定であったが、適当な抗体を入手できない可能性が高いことからmRNA発現量レベルで評価することが可能になるようにプライマーやPCR条件を確立する予定である。以上のように、遺伝子発現レベルでの研究を中心として本年度の研究を進める予定である。当初予定していた培養細胞を用いる試験については、研究経費に余裕ができた場合に実施する予定としている。
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