2018 Fiscal Year Research-status Report
外傷性脳損傷におけるインフラマソームの役割の解明とその制御に基づいた治療薬の開発
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17K08127
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森山 光章 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20275283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50453139)
中村 洋一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90180413)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グリア細胞 / アストロサイト / ミクログリア / インフラマソーム / 外傷性脳損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の後半に得られた結果を元にさらに解析を進めた。すなわちグリア細胞のうち最も細胞数の多いアストロサイトを用いたin vitro実験を行った。アストロサイトにインフラマソームを活性化させる危険シグナルであるリポポリサッカライド(LPS)を添加すると、炎症性変化が引き起こされ、活性化の指標であるIL-1b産生の増加が確認できた。この変化に対する短鎖脂肪酸および中鎖脂肪酸の効果を検討したところ、酪酸 (炭素数C=4, C4と表記)、カプロン酸 (C6)、オクタン酸 (C8)、カプリン酸 (C10)、ラウリン酸(C12)いずれの脂肪酸においても0.5 mM以上の濃度同時添加によりインフラマソーム活性化がさらに増強することを明らかにした。酪酸(C4)に焦点を当て活性化増強の機構を解析した。インフラマソーム活性化増強時には活性酸素種(ROS)や一酸化窒素(NO)産生の増加が認められたが、MAP kinase類(p-38 MAPK, ERKやJNK)の活性化はみられなかった。炎症性サイトカインであるTNF-aの産生・放出は増加したが、抗炎症性サイトカインであるIL-10は減少がみられた。酪酸(C4)によるROSおよびNO産生の増加は細胞膜受容体であるGPR41を介することが明らかとなった。ミクログリアにおいて中鎖脂肪酸は0.1 mMからインフラマソーム活性化を抑制し炎症反応を沈静化させる方向に働く(前年度の結果)のに対し、逆にアストロサイトにおいては、0.5 mM以上の濃度でインフラマソーム活性化を増強し炎症を増悪させる効果を持つことを考えると中鎖脂肪酸は低濃度ではインフラマソームの活性化を抑制し高濃度では増強することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は短鎖脂肪酸である酪酸や中鎖脂肪酸(カプロン酸、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸)はアストロサイトの炎症性変化を抑えるものと予想していたが、この予想とは異なる結果、すなわち炎症反応を増悪させる効果が得られた。この理由として、これら脂肪酸は濃度の違いにより炎症抑制作用と増悪作用のどちらにも作用する可能性が考えられる。現在、得られた成果を元に、公表論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、in vivo TBI (traumatic brain injury: 外傷性脳損傷) モデルを用いてインフラマソーム発現変化を調べる予定である。この変化に対する各種短鎖および中鎖脂肪酸の効果も合わせて検討する。これらの検討により、TBI時のグリア細胞のインフラマソーム活性化の制御機構をさらに明らかに出来ると考える。
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Causes of Carryover |
前々年度に残った分がそのまま残っている。今年度の学会発表に用いる予定である。
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