2018 Fiscal Year Research-status Report
糖質コルチコイド受容体遺伝子型の相違によるアレルギー反応への影響
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17K08129
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小柳 円 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (00543399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心理的ストレス / ヘルパーT細胞 / アレルギー / グルココルチコイドレセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的・心理的ストレスはアレルギー性疾患など免疫系へ影響を与えると考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。ストレスにより増加する糖質コルチコイドに対する受容体(GR)遺伝子配列はマウス系統により異なり、ストレス感受性に相違を生じる可能性がある。しかも、アレルギー反応の起こりやすさもマウス系統により異なることから、本研究ではGRの遺伝子型に着目し、心理的ストレスが与える免疫反応への影響を明らかにする。 平成30年度には拘束ストレスによる免疫細胞でのGR、Rtp801、 GILZ、 MKP-1、 Bnip3、Tp53inp1などのストレス関連遺伝子発現についてを、BALB/cマウスおよびC57BL/6マウス由来のGR遺伝子をそれぞれ置換したGRコンジェニック (Cg)マウスを用いて解析を行った。さらに、平成31年度に予定していたCRHノックアウト(KO)マウスを用いて同様の実験を行った。 GR Cgマウスに拘束ストレスを負荷し、脾臓細胞のストレス関連遺伝子の発言を解析したが、Rtp801, GILZ, MKP-1遺伝子の発現はどのGR遺伝子型のマウスでも同程度の発現誘導が見られたが、GR遺伝多型による違いは見られなかった。 野生型マウスでは拘束ストレス負荷後にストレス関連遺伝子のRtp801, GILZ, MKP-1遺伝子の有意な発現増加が認められたが、CRH KOマウスではこれらの遺伝子の発現増加は認められなかった。さらに、血中コルチコステロンの濃度を比較したところ、野生型マウスでは拘束ストレス負荷後のコルチコステロンは増加していたが、CRH KOマウスでは増加はみられなかった。このことから、Rtp801, GILZ, MKP-1遺伝子の発現はグルココルチコイド感受性が高い可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GR下流遺伝子の発現の解析、GR発現の解析については、BALB/c, C57BL/6野生型マウス、GRコンジェニックマウスおよび、CRH KOマウスを用いての解析を行い、近く論文に発表予定であり、概ね順調に進んでいる。しかしながら、平成30年度に予定していた研究計画のGR遺伝型と免疫反応との関連の実験については、解析が進んでおらず、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はGR遺伝子型と免疫反応との関連、とくにアレルギー疾患悪化のメカニズムについての解析を中心に研究を進める。 TH2偏向型のBALB/cマウス、TH1偏向型のC57BL/6マウス、GR コンジェニックマウスを用いて、in vitroにおいてデキサメサゾンによるTH1、TH2、Treg細胞の分化誘導に与える影響を明らかにする。そのために、TH1の指標としてIFN-gamma、T-bet、TH2の指標としてIL-4、IL-13、GATA-3、Tregの指標としてIL-10、Bcl-6、Ascl2、Foxp3などのサイトカインおよびマスター転写因子の発現誘導などを指標とし解明する。In vivoによる拘束ストレスによってもT細胞の文化に影響を与えているかを解析する。 さらに、GRはIL-4受容体の下流にあるSTAT6, IL-2の下流のSTAT5に結合し、これらのサイトカイン産生に関与し、TH1/TH2の偏向を制御している可能性がある。そこで、STAT5、STAT6とGRの会合の差異を検討する。1.BALB/c、C57BL/6、GR コンジェニックマウスのヘルパーT細胞をデキサメサゾンおよびTCR刺激を行い、タンパク質を精製し、STAT5もしくはSTAT6抗体によりGRが共沈されるか否かをウエスタンブロット法により検出する。2.GRが直接、もしくは他の因子を介してTH2サイトカイン遺伝子領域(IL-4,IL-13遺伝子座)、IFN-gamma遺伝子座に結合し、サイトカイン産生を制御している可能性をChip法、ゲルシフト法により明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度に予定していた、心理ストレスによるGR遺伝型と免疫反応と実験に関しては関してはあまり解析が進んでおらず、研究進行状態にやや遅れがでており、この実験項目に使用予定であった定量PCR試薬、抗体、細胞培養用試薬などの購入を行っていないので今年度中に全て使用することができなかった。本研究課題では免疫細胞に与える影響を解析することは不可欠であり、今後はこれらの実験を踏まえ、研究を進めていくため、繰越する必要があり、次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(1 results)