2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08132
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
日野 敏昭 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10550676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体内受精 / 卵管 / 精子 / 蠕動運動 / 卵管液 / 卵巣嚢孔 / 精子輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、卵管に辿り着いた射出精子が、受精の場である卵管膨大部に到達するまでの移行メカニズムを明らかにすることである。卵管内の精子移行には、卵管の蠕動運動やそれによって生じる卵管液の流れが関わっているとされる。一方、これらは卵管を生体から切り離して行われた検討により明らかにされたものであり、生体内の現象が正確に反映されていない可能性もある。H29年度は、卵管を生体につなげたまま蠕動運動を観察するための ① in situ観察システムの立ち上げと、そのシステムを用いた ② 卵管の蠕動運動と卵管液の流向の調査を行った。 ① in situ観察システムの立ち上げ・・・雌マウスを吸入麻酔し、卵管を背側から腹腔外に取り出して保持した。そこを囲むように還流用カラー(シリコンチューブより自作)を移植し、カラー内にPBS(37℃)を循環させることで、生体につなげたまま経時的に卵管の蠕動運動を観察することが可能となった。また、カラー内の卵管峡部下部に生きた精子を注入すると、精子が卵管膨大部へと到達し、すべての卵が受精したのを確認した。 ② 蠕動運動と卵管液の流向の観察・・・卵管峡部下部に微量の墨汁を注入し、卵管内の墨汁の挙動を指標にして卵管液の流向を調べた。排卵前後の卵管では活発な蠕動運動が観察され、卵管内に注入した墨汁は、排卵の有無に関わらず短時間に卵管膨大部へと移動した。卵管膨大部内の墨汁はそこに留まらず、時間とともに卵巣嚢へと移動し、卵巣嚢に開口している小さな穴(卵巣嚢孔)を通り腹腔へと抜けた。活発な卵管の蠕動運動は発情期以外でも観察され、卵管峡部下部に注入した墨汁は、多少の時間的遅れはみられたものの卵管膨大部へと移動した。最後に卵管液の由来を調べたところ、卵管液は卵管全体から分泌されており、1時間に約2.7μl(卵管内における卵管液の総量は約2.1μl)が分泌されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体につなげた卵管の蠕動運動を観察するための、in situ観察システムの開発を達成した。また、本システムによるデータの収集も順調に進み、卵管液は、これまでの定説とは異なり、子宮側から卵巣に向かってかなりの速さで流れていること、従来、閉鎖空間とされていたマウスの卵巣嚢に小孔が存在すること、その小孔を通って、卵巣嚢に到達した卵管液が腹腔へと流れ出ていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は卵管に墨汁を注入して卵管液の流向を解析した。H30年度では、墨汁とともに生きた精子を注入して、卵管液の流向と精子の移行の相関性について調査する。また、副次的ではあるが、本研究において確認された構造である卵巣嚢孔についても、その機能と受精との関わりについて調査する予定である。
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Causes of Carryover |
実験に多量に使用する吸入麻酔薬の後発薬(ジェネリック)が発売され、吸入麻酔薬の単価が大幅に下がったことと、共同研究者の滞在期間が当初の予定より短くなったため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額を合わせた助成金は、各実験計画を遂行するための消耗品・実験動物等の購入、共同研究者の滞在費、学会参加、論文投稿等に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)