2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of culture systems controlling cumulus cell function for the growth of oocytes from domestic animals
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17K08137
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮野 隆 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80200195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / 卵丘細胞 / 顆粒膜細胞 / 体外培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の卵巣内で,卵母細胞は周囲の顆粒膜細胞と結合した状態を維持し,顆粒膜細胞から種々の物質を受け取ることによって,最終の大きさへと発育する。本研究は,家畜の初期胞状卵胞から採取した種々の発育段階の卵母細胞を含む「卵母細胞-卵丘複合体」を用いた卵母細胞の体外発育培養系を完成させるとともに,裸化卵母細胞でも発育可能な培養系を考案することを目的としている。 本年度は,ウシおよびブタの初期胞状卵胞から発育段階の異なる卵母細胞を含む卵母細胞-卵丘複合体(OCC)を採取して体外培養し,以下の結果を得た。 1)ウシの初期胞状卵胞(直径0.5~0.7 mm)から採取したOCC(卵母細胞の直径約100μm)を4% PVP,エストラジオール17βおよびアンドロステンジオンを含む培養液中で2週間培養した。対照とした卵母細胞-卵丘-壁顆粒膜細胞複合体(OCGC)は胞状卵胞様の構造を形成し,構造内部で卵母細胞は発育した。OCCでは胞状卵胞様の構造の形成は遅れたが,同様な構造が形成され,卵母細胞は最終の直径(約125μm)へと発育した。また,発育した卵母細胞の約8割は,成熟培養によって成熟した。 2)ブタの初期胞状卵胞(直径0.5~0.7 mm)から採取したOCC(卵母細胞の直径約100μm)を2% PVPとFSHを含む培養液中で2週間培養した。酸素濃度を20%から5%にするとOCCの生存率の低下は軽減された。培養の過程でOCCは胞状卵胞様の構造を形成し,内部で卵母細胞は発育した。 3)ウシの初期胞状卵胞(直径約1.5 mm)から採取した直径約110μmの卵母細胞を含むOCCを1)と同様な培養液中で5日間培養し,種々のホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬の影響を検討した。PDE3Aを阻害すると,卵母細胞は減数分裂を再開することなく,また卵丘細胞との結合を維持した状態で発育し,成熟能力を獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシでは,直径0.5~0.7 mmの初期胞状卵胞から採取したOCC(卵母細胞の直径約100μm)を2週間培養すると,壁顆粒膜細胞を含む複合体(OCGC)と同様に卵母細胞が発育し,成熟能力を獲得することが示され,卵丘細胞のみでも卵母細胞の発育が十分支えられることが明らかとなった。ブタの直径0.5~0.7 mmの初期胞状卵胞から採取したOCCにおいても,生存率は低下するものの卵母細胞は発育することが示された。また,ウシの直径約1.5 mmの初期胞状卵胞から採取したOCCでは,PDE3Aを阻害した条件で培養すれば,卵母細胞は減数分裂を休止した状態で発育を完了させることも示された。 卵母細胞と卵丘細胞の結合については,ウシの初期胞状卵胞(直径0.5~0.7 mm)から採取したOCCで,培養終了後も透明帯を貫通するtrans-zonal projection(TZP)を介した卵母細胞と卵丘細胞間の結合が維持されること,また,直径1.5 mmから採取したOCCでは,PDE3Aを阻害した条件で培養すると,ギャップ結合を介した卵母細胞と卵丘細胞間の連絡が維持されることを確認しており,予定していた研究は,いずれも概ね順調に進んだ。 初期胞状卵胞(ウシ:直径0.5~0.7 mmと1.5 mm,ブタ:直径0.5~0.7 mm)から採取したOCCが,いずれも培養の過程で胞状卵胞様の構造を形成することは新たな発見であった。この構造が,卵巣内の卵胞で形成される卵胞腔と同様なものであるかはわからないが,この結果は,卵丘細胞が体外培養の過程で再び壁顆粒膜細胞と卵丘細胞に分化する可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
ブタの初期胞状卵胞(直径約1.5 mm)から採取した,減数分裂再開能力は持つが成熟能力を持たない直径約110μmの卵母細胞を含むOCCでは,cAMPアナログを添加することによって,減数分裂を休止した状態で発育を完了することが示唆されている。しかし,本研究で用いた培養系では,cAMPアナログがうまく機能せず,ホスホジエステラーゼ阻害剤の作用についても今後検討する予定である。また,ブタの初期胞状卵胞(直径0.5~0.7 mm)から採取したOCCでは,2週間の培養期間中に生存率が低下することから,卵丘細胞の生存性や増殖に影響すると考えられるホルモンおよび成長因子の影響についても検討する。 平成30年度に開始予定の,卵丘細胞間,卵母細胞-卵丘細胞間接着の分子機構と卵丘細胞と卵母細胞との結合の再形成に関する研究を予定通り開始する。ウシの初期胞状卵胞(直径0.5~0.7 mm)から採取したOCCでは,卵母細胞周囲の卵丘細胞をピペッティングによって除去して卵母細胞を裸化するとTZPが消失すること,裸化卵母細胞を顆粒膜細胞と共培養すると,卵母細胞と顆粒膜細胞とのTZPを介した再結合が起こることを予備的な実験で確認しており,この研究をさらに発展させる。
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