2017 Fiscal Year Research-status Report
牛子宮内膜間質SP細胞の間葉上皮転換による子宮内膜再生機序の解明
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17K08141
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松山 秀一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (50455317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 子宮 / 牛 |
Outline of Annual Research Achievements |
経産牛における空胎期間延長の一因として子宮回復不全が挙げられる。子宮は分娩時に胎盤が剥離して大きく損傷を受ける一方、その後速やかに子宮内膜が再生することで修復される。したがって経産牛における子宮回復不全には、分娩後の子宮内膜再生の不具合が関与していると考えられるが、牛の分娩後における子宮内膜の再生機序は未だ解明されていない。申請者はこれまでに、牛子宮内膜間質細胞において幹細胞活性を有すると報告されているSide population (SP) 細胞が存在することを明らかにしており、平成29年度は、この子宮内膜間質SP細胞が子宮内膜上皮細胞へ分化転換、増殖することで子宮内膜の再生に寄与するという仮説のもと、産次や受胎性の異なる牛の子宮内膜SP細胞割合およびポビヨンヨードの子宮内投与後の子宮内膜SP細胞割合の変化について検討を行った。まず、産次の進んだ牛および低受胎傾向の牛の子宮内膜におけるSP細胞の割合について、子宮内膜組織をバイオプシーによって採取し、採取した子宮内膜組織から酵素処理によって得られた細胞をフローサイトメトリー解析によって検討した。その結果、高産次および低受胎傾向牛のSP細胞割合は低産次および正常受胎牛と同程度であったことから、SP細胞の割合は産次による影響を受けず、また、SP細胞の多寡が受胎性に影響を及ぼす可能性も低いことが考えられた。一方、ポビヨンヨードを子宮内に投与し、投与後7日および14日における子宮内膜SP細胞の割合をフローサイトメトリー解析によって検討したところ、SP細胞の割合は投与後7日目で低値を示し、その後14日目にかけて増加した。この投与後7日目から14日目のSP細胞割合の変化は分娩後10日目から30日目にかけて見られる変化と同様であり、イソジン洗浄によって子宮内膜細胞の再生が引き起こされる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
牛子宮内膜間質SP細胞における増殖能や分化能、遊走性などの細胞特性の検討が未実施であり、研究の遂行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はウシ子宮内膜間質SP細胞を分化培地で培養したが、骨、脂肪、軟骨等の中胚葉由来組織に分化しなかった。その理由として、培養に供したSP細胞の細胞数が少なかった可能性の他、分化にはSP細胞以外の細胞が必要である可能性が考えられた。そのため平成30年度は、SP細胞を含む子宮内膜間質細胞を用いて分化能、遊走性などの細胞特性の検討を進めるとともに、当初予定していた3次元細胞培養による子宮内膜オルガノイドを作製し、自己組織構築能についての検討を行う予定である。
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