2018 Fiscal Year Research-status Report
牛子宮内膜間質SP細胞の間葉上皮転換による子宮内膜再生機序の解明
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17K08141
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松山 秀一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50455317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 子宮 / 牛 |
Outline of Annual Research Achievements |
経産牛における受胎率低下の一因として子宮回復不全が挙げられる。子宮は分娩時に胎盤が剥離して損傷を受ける一方、その後速やかに子宮内膜が再生することで修復される。したがって、分娩後の子宮内膜再生の不具合が受胎率低下に関与していると考えられるが、牛子宮内膜の再生機序は未だ解明されていない。我々はこれまでに、他の動物種で幹細胞活性を有すると報告されているSide population (SP) 細胞が、牛子宮内膜間質細胞にも存在することを明らかにした。さらに、子宮内膜細胞におけるSP細胞の割合は分娩直後に低く、その後、徐々に増加していたことから、牛子宮内膜に存在するSP細胞が増殖、分化することで子宮内膜の再生に寄与する可能性が考えられた。そこで平成30年度は、子宮内膜SP細胞が実際に幹細胞特性を有するか否か確認するため、SP細胞における間葉系幹細胞マーカー遺伝子の発現について検討を行った。牛子宮内膜組織からコラゲナーゼ処理により得られた子宮内膜間質細胞を用い、DNA染色剤Hoechst33342にて染色後、フローサイトメトリーおよびセルソーターを用いてSP細胞を分取した。SP細胞とSP細胞以外の間質細胞における遺伝子発現をリアルタイムPCRにより比較した結果、SP細胞では間葉系幹細胞のマーカーであるMCAMのmRNA発現が高い傾向であることが確認された。次に、SP細胞における自己組織構築能について検討するため、SP細胞を超低接着表面プレートで培養した。その結果、3次元スフェロイドの形成が確認できたものの、上皮細胞と間質細胞からなる腺管構造は確認できなかった。これらの結果から、牛子宮内膜の幹細胞特性を有するSP細胞が、分娩後の子宮内膜再生に寄与することが示唆された一方で、生体外におけるSP細胞による自己組織構築には、細胞の足場となる基質が不可欠である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に関しては、SP細胞を超低接着表面プレートで培養した結果、3次元スフェロイドの形成が確認できたものの、上皮細胞と間質細胞からなる腺管構造は確認できなかった。このため、今後、マトリゲルを用いた3次元培養を行い、SP細胞の自己組織構築能の検討を進める必要があり、研究の遂行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、ウシ子宮内膜SP細胞を超低接着表面プレートで培養した結果、3次元スフェロイドの形成が確認できたものの、上皮細胞と間質細胞からなる腺管構造は確認できなかった。その理由として、生体外におけるSP細胞による自己組織構築には、細胞の足場となる基質が不可欠である可能性が考えられた。そのため平成31年度は、マトリゲルを用いた3次元培養を行い、SP細胞の自己組織構築能の検討を進めるとともに、当初予定していたSP細胞から派生した細胞系譜の識別、および低受胎牛子宮へのSP細胞の移植が受胎率に及ぼす影響について検討を行う予定である。
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Research Products
(1 results)