2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of severe disease mechanism using mouse model infected with dengue virus, developing the symptoms of vascular leakage and bone marrow suppression.
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17K08145
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
黒須 剛 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究官 (70432432)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デングウイルス / サイトカインストーム / 多臓器不全 / 感染動物モデル / 血漿漏出 / 出血熱 / 重症化 |
Outline of Annual Research Achievements |
デングウイルス感染症は。血管透過性の亢進と血小板減少症を特徴とし、重症化すると血漿漏出により出血を伴うショック症状に陥る。その病原機序は明らかではなく、効果的な治療法・予防法はない。これまでに我々は血漿漏出と血小板減少症、骨髄抑制(巨核球と赤芽球島の消失)を観察できるデングウイルス感染新規マウスモデルの開発に成功しており、本研究ではこのモデルを用いて重症化機序を明らかにすることを目的とした。 血症漏出を伴う重症化には宿主の過剰な防御反応、いわゆるサイトカインストームが関与していると考えられている。TNF-α阻害のよりマウスが防御されることから、本モデルでもサイトカインストームにより重症化していると考えられた。詳細な網羅的解析から、病態進行の中で最も鍵になるのが、IL-17A産生であることが明らかになった。IL-17Aは、強い炎症作用があるIL-6の過剰産生を促進している分子であった。IL-17Aを産生する細胞はいくつか知られているが、自然免疫と獲得免疫の両方の性質を持つガンマ・デルタT細胞により産生されていることが明らかになった。 以上の観察から、ガンマ・デルタT細胞の活性化機序を明らかにすることが重症化機序解明に重要であると結論した。通常のT細胞は、T細胞受容体が抗原提示細胞に発現する抗原の断片を載せたMHCを認識し、活性化・増殖する。ガンマ・デルタT細胞の活性化にもT細胞受容体が使用されることもあるが、MHC分子ではなく直接抗原や宿主のストレス因子を認識することが知られている。また、T細胞受容体以外の細胞表面分子によっても活性化される。どの受容体が活性化に使用されているかを明らかにすることで、次にガンマ・デルタT細胞活性化のリガンドを探索できる。本年度は、以上を明らかにする研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血漿漏出を伴う重症化機序に関しての詳細な機序が判明してきた。IL-6産生が重症化に非常に重要であるが、この高産生にはIL-17A産生が鍵となり、IL-17Aは胸腺と腸管に存在するガンマ・デルタT細胞から産生されることが明らかになった。腸管には腸管上皮細胞間としてもともとガンマ・デルタT細胞が存在するが、さらに爆発的に細胞数が増殖していた。この細胞の活性化機序を解明するため、激しい血漿漏出が観察された腸管、肝臓、さらにT細胞供給場と考えられる胸腺、脾臓を用いて、T細胞受容体(TCR)のVガンマ鎖、Vデルタ鎖の遺伝子をRT-PCRサザンブロット解析により型別した。その結果、IL-17A産生T細胞はポリクローナルに増殖したと考えられ、TCRに依存しない刺激によって活性化・増殖したと考えられた。TCRが多様性を示したことから、MHCを介したTCRへの刺激ではなく、TCRへの抗原の直接の結合、TLRやDectin-1などの分子への結合、脂質抗原を提示するCD1d(様々な細胞に発現)などが活性化のシグナルとなり得ると考えられた。また最も血漿漏出の激しかった腸管ではなく、胸腺などで抗原と出会い、増殖した細胞が移動してきたと考えられた。 またガンマ・デルタT細胞分化には、抗原提示細胞である樹状細胞から産生されるIL-1βとIL-23が必要であることが知られている。感染マウスでは両分子ともに発現上昇しており、TNF-α阻害によりIL-1βが顕著に抑制された。そこでIL-1βとIL-23阻害効果を確認したろころ、IL-17Aの単独阻害よりマウス生存率が上昇した。このことからいくつかの分子を複合的に阻害することでサイトカインストームによる重要化を阻害できる可能性があると結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでで最も重要な観察は、感染末期にガンマ・デルタT細胞が増殖し、IL-17Aを産生することである。ガンマ・デルタT細胞が活性化の詳細機序を明らかにすることが最優先事項であり、これまでのところT細胞受容体以外の受容体が活性化・増殖の刺激になっていることが判明している。今後はこれまで報告のあった他の活性化受容体、Toll-likeレセプターやレクチンなどの関与について検討する。まずこれら分子の発現後の発現レベルについて定量RT-PCR法とフローサイトメトリー法により調べる。その後、ガンマ・デルタT細胞を分離し、それぞれの受容体のリガンドとして報告されている分子により刺激することでIL-17A産生を刺激するか確認する。受容体が明らかになった場合、本モデルにおける受容体に対するリガンドは何かを同定するため、分離ガンマ・デルタT細胞へウイルス因子、宿主因子を加えて、リガンドの同定を行う。 (2)どこの臓器にエフェクターになる細胞が集まるかは症状を理解する上で重要である。本モデルではガンマ・デルタT細胞がいかに腸管に集まってきたか、ホーミングに関する機序を解明する。候補ケモカイン分子発現を定量RT-PCR法とフローサイトメトリー法により調べる。また分離したガンマ・デルタT細胞を用いてin vitroにおけるケモタキシス・アッセイを行いリガンドのケモカインを同定する。 (3)デングでは、2回目以降の感染によって重症化することが知られており、B細胞かT細胞かの記憶細胞による免疫応答が重症化へ関わると考えられている。一方、ガンマ・デルタT細胞は長期に渡り記憶を維持することが報告されている。低いウイルス力価で感染させ生存したマウスから、感染後一定の期間を置いてガンマ・デルタT細胞を分離し、IL-17A産生レベルを測定する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で研究に少しの遅れが出たためと、これまでの研究を効率よく行ったため、当初予定の経費を削減できた。研究の遅れた部分を行い、論文投稿するために経費が必要である。
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