2017 Fiscal Year Research-status Report
Prisoner's dilema game found in a multiple queen founnding ant species
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17K08148
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 俊幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80242238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 哲史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10549637)
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 教授 (40387353)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 協力行動 / 囚人のジレンマ / 生体アミン / オクトパミン / 社会性昆虫 / アリ / 多雌創設 / 栄養交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
チクシトゲアリ(Polyrhachis moesta)は秋に行われる結婚飛行後、交尾した創設女王アリが、しばしば複数で同じ営巣場所(枯れ枝の中の空洞)で越冬し、互いに口移しで栄養交換も行い、翌春卵を産み、共同で幼虫の世話をしながらコロニーを創設するアリである。これまでの研究により、創設期の女王より成熟巣の女王の方が脳内オクトパミン濃度が有意に高いこと、創設期でも女王数が多いほど女王の脳内オクトパミン濃度が高いこと、創設女王にオクトパミンを経口摂取させると栄養交換や他個体の体を舐めて掃除するなどの協力行動の頻度が低下し、逆に、相手の触角を噛んで引っ張るなど敵対的な行動を誘導できることが明らかになった。また、越冬明けの栄養状態が悪化した時期の女王を使った実験において、相手に栄養交換を要求したのに拒否された場合、拒否した相手に対し攻撃的にふるまうことも明らかになった。 創設女王の行動が協力から敵対へと変化するうえで、オクトパミンという神経作用修飾物質が大きく関与していることは明らかにした。本種における女王どうしの協力は、越冬してコロニーを創設するという、コロニーの生活史上、最も死亡率が高く危険な時期における互恵的利他行動と考えられる。クリティカルな状況下で、繰り返しインタラクションが起こり、互いに等価交換的に栄養を与え合うのか、搾取する側に回るのか、搾取される側に回るのか、立場の違いで適応度が劇的に変化しうる。協力か裏切りか、「反復のある囚人のジレンマ・ゲーム」が成り立つ状況にあるといえる。本種は、協力か非協力か普遍的な行動原理を解析できる大変貴重な研究対象である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
越冬明けの栄養状態が悪化した時期の女王を使った実験において、相手に栄養交換を要求したのに拒否された場合、拒否した相手に対し攻撃的にふるまうことが明らかになった。この事実は越冬前の栄養状態が良い時期で、普通なら栄養交換を要求すれば応えてくれる状況においても、任意の創設女王にオクトパミンを経口摂取させ、栄養交換を拒否するように行動を操作すれば、相手の行動が協力から敵対へと変化するのかどうか、囚人のジレンマ状況が作り出せることを示唆している。今後計画に従い3者系の実験を進める土台が固められた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、任意の創設女王にオクトパミンを経口摂取させ、栄養交換を拒否するように行動を操作する実験を進める。今後計画に従い3者系の実験を行う。①3個体のうち一個体のみオクトパミンを摂取させると、摂取させた個体は非協力的になるので、他の2個体から攻撃を受けるようになるのか、無視されるだけになるのか、摂取させなかった個体どうしで協力行動が高まるのか、摂取させた個体は巣を出て独立するのか、など明らかにする。②3個体のうち2個体にオクトパミンを摂取させた場合、摂取させなかった1個体は2個体から非協力的な反応を受けるので、2個体に攻撃的にふるまうよりは、それらを避けて巣から出て行こうとするのか?相手の出方でどう行動を変えるのか、行動を変えずに耐えるのか、他の巣を探しに出ていくのか、といったことを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
試薬の購入と人件費を節約できたため。新年度の助成金と合わせ、主として謝金や調査旅費、英文校閲費として使用する。
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