2017 Fiscal Year Research-status Report
NanoSuit法に元素分析法を組み合わせた、生きたままの昆虫表面解析と工学応用
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17K08150
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
高久 康春 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (60378700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
針山 孝彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30165039)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 高真空 / 生きたまま / NanoSuit / エネルギー分散型X線分析(EDS) / 元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、昆虫が潜在的に備えているバリアー能を模倣・利用するという視点から革新的電子顕微鏡技術(NanoSuit法)を開発し、従来法の像とは全く異なる「生きたままの電子顕微鏡像」を得ることに成功した。本研究では、この技術を展開し NanoSuit法にEDS元素分析(エネルギー分散型X線分析・Energy Dispersive x-ray Spectrometry:どこにどのような元素が分布しているか、元素ごとにMappingできる測定法)を組み合わせることにより、これまで誰も成し得なかった「微細構造を壊すことなく、電子顕微鏡(FE-SEM)により、生きたまま・濡れたままの状態で高分解能・元素分析(NanoSuit_EDS法)を行う新技術」の開発を行ってきた。その結果、既に幾種かの昆虫を生きたままEDS分析し、これまでに発見されなかった金属元素の発現を特定した。この元素は生きている個体の体表にみられる針状構造にのみ局在し、従来法で作成した死んだ試料では(試料作成時に消失してしまうため)検出することが出来ない。そこで現在、さらにNanoSuit_EDS法を用い、生きたままの生体表面の元素情報を金属原子を中心にMappingし、超微細構造がもつ未知の機能の解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のEDSによる元素分析法は、化学固定・脱水・乾燥処理を施した試料を用いていた為「生きたままの高分解能解析」は不可能であった。また、この技術で作成された試料は収縮・変形により本来の微細構造を反映していないだけでなく、多様な溶液処理を行う結果として、生体試料中に付着しているだけの元素は洗い流され、残っていても局在や分布は修飾されていた。本新技術により、種々生きたままの生体表面の元素情報が明らかになった。研究の進捗状況は、おおむね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、既に『生きた植物・動物試料を用いたNanoSuit_EDS法』の開発に着手している。NanoSuitにより超微細構造が損なわれることなく観察される上、従来の「死んだ試料を解析する方法」に比べ、生きたままの試料では、EDSで検出される元素の種類・局在部位が大きく異なることが明らかになった。次年度は、この新技術『NanoSuit_EDS法』により、超微細構造との比較解析を行ない、これまでに同定された元素と生きた構造の相関を解明する。さらに、昆虫の発生過程に見られる元素を追跡し、微細構造における継時変化を発生過程を追って解析する。例えば、これまでの予備的な実験から、ヒトスジシマカの幼虫(ボウフラ)では、口吻の毛状構造で特定金属元素が検出されることを発見した。そこで、孵化した幼虫をNanoSuit_EDS法により生きたまま継時的に解析し、特定元素がどのように局在変化して行くのか、発生過程を卵から成体にかけて追跡する新しい継時的解析法を開発する。また、金属元素が含まれていない環境で個体を育て比較することで、形態形成過程と共に生物濃縮のメカニズムを解析する。一方、特定金属元素はヒトスジシマカ成虫の口針からも検出される(幼虫、成虫ともに、シグナルは生きた個体でのみ検出され、死んだ従来法試料では消失する)。ボウフラ口吻と成虫の口針の強度を、元素分布を指標に、AFMで比較解析することで、金属元素がもつ機能を探る。
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Causes of Carryover |
我々は、これまでの実験・解析から、新規の試料作成法(保護法)の開発に成功した。そのため、当初予定していた機器の購入計画を凍結し、新技術のさらなる展開のため、費用を次年度以降に繰り越すことにした。
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Research Products
(5 results)