2017 Fiscal Year Research-status Report
寄主免疫作用に対するヤドリバエの回避戦略:本当に柔術か
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17K08157
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
中村 達 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 企画連携部, 再雇用職員 (40373229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 誠一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10391583)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヤドリバエ / 捕食寄生性昆虫 / 寄主免疫作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤドリバエDrino inconspicuoides幼虫が寄生に際し寄主に侵入すると、幼虫体の周囲に寄主免疫作用の結果と考えられる一種の膜状物質が形成される。調査により、この構造物の形成過程で、寄主の脂肪体がその構成要素の一つであることが明らかになった。そこで、「この脂肪体細胞は、ヤドリバエ幼虫が体外に分泌した成分の誘引によるものである」という仮説を立てて検討を行った。ヤドリバエ幼虫を寄主であるアワヨトウ幼虫に寄生させ、2時間後に寄主を解剖してハエ1齢幼虫を回収し、生理食塩水中に放置して幼虫が分泌すると考えられる物質を回収した。この分泌溶液にビーズを浸漬してコーティングし、アワヨトウ体腔内に移植したところ、ビーズに脂肪体細胞が付着することが確認された。このことから、分泌物に脂肪体誘引活性物質が含まれている可能性が示唆された。さらに、分泌溶液をプロテアーゼで処理し、その溶液をビーズに吸着させたところ、脂肪体の誘引活性が失われたことから、分泌溶液に含まれる脂肪体誘引物質はタンパク質性であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヤドリバエ幼虫から分泌される生理活性物質を、ポリスチレン製のマイクロビーズへ吸着させることにより回収することに成功した。また、このビーズのアワヨトウ幼虫への移植実験系を確立し、寄生脂肪体誘引物質がタンパク質性であることを突き止めている。この系を応用することにより、PO活性をはじめとする様々な生理活性の測定ができる目処がたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤドリバエ幼虫が分泌する寄主脂肪体誘引物質についての情報が全くないため、まずは単離して、その構造を明らかにすることを目指す。そしてこの物質の合成および分泌器官、また分泌されるタイミングなどについて研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
仮説の検証に際し、新規発見の可能性があり、これを確かめるのに予定外の時間を費やした。このため、消耗品などの使用経費が計画より少なくなり次年度使用額が生じた。次年度は実験を予定通り実施するため、分子生物学関連試薬、飼育関連飼料などの購入と、これまでの成果を国際学会で発表する。
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