2018 Fiscal Year Research-status Report
チョウ目幼虫の耳の進化:捕食回避のための機械感覚子は生活様式に規定されるか?
Project/Area Number |
17K08158
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
高梨 琢磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60399376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土原 和子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (10300823)
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機械感覚 / 感覚子 / チョウ / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガの幼虫は、体表に点在する糸状感覚子(機械感覚子の1種)で音を検知することができる。この感覚子は気流等も検知する。この糸状感覚子は胸部に存在するが、チョウ目において糸状感覚子の数や位置が多様であると考えられる。本研究では、チョウ目を網羅する分類群における糸状感覚子の形態観察、行動実験による機能解明、そして糸状感覚子に関する系統・進化解析をおこなうことで、寄主植物における生活様式の変化によって、感覚子が発達や退化をおこしていることを検証する。当年度までにガ類及びチョウ類の幼虫を日本各地で採集し、糸状感覚子の同定並びに比較をおこなった。日本産35上科中、28上科200種以上(ガ類:26上科38科159種、チョウ類:2上科5科43種)を観察した結果、糸状感覚子を1)胸部にのみを持つ種(6上科)、2)腹部にのみ持つ種(2上科)、3)腹部と胸部の両方に持つ種(5上科)、そして4)糸状感覚子を欠く種(15上科)がみられた。チョウ目の約98%の種を含む二門類では糸状感覚子を持つ種が多く多様性に富んでいたが、二門類以外(より原始的な分類群)では糸状感覚子を欠く種が多い傾向があった。ただし、二門類においても葉などのシェルターに隠れて生活する内部食の種で糸状感覚子を欠く傾向があった。チョウ目幼虫において、内部食から植物体外に出て摂食する外部食へと進化してきたとされている。その過程で糸状感覚子を発達させ、天敵に対する防衛を進化させてきた可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
8上科200種以上を観察し、糸状感覚子の多様化のパターン(胸部のみ、腹部のみ、胸部と腹部、なし)を特定できた。チョウ目幼虫において、内部食から植物体外に出て摂食する外部食へと進化してきたとされている。その過程で糸状感覚子を発達させ、天敵に対する防衛を進化させてきた可能性が高いことが、内部食の種で糸状感覚子を欠く傾向から示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
チョウ目複数分類群において、糸状感覚子が未同定の複数種における観察をおこなう。そして、これまで観察された感覚子の多様化のパターン(胸部のみ、腹部のみ、胸部と腹部、なし)と、幼虫の生活様式(内部食、外部食)や捕食に関して、系統関係を参照した解析をおこない、糸状感覚子の多様化と寄主植物における生活様式との関係性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
森林総合研究所において、計画していた物品購入は、当初の計画よりも5種以上の実験が結果が得られたことから不要となり、一部をとりやめた。余剰分について、来年度には研究成果報告のための打合せや、サンプル採集のための旅費として計上する。
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Research Products
(4 results)