2017 Fiscal Year Research-status Report
農業害虫の抗ウイルス反応を阻害するウイルス因子の同定と機能解析
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17K08159
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田中 博光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 室長 (30391577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 理都子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (10414947)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 昆虫媒介性の植物病原ウイルス / RNA干渉反応阻害因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫媒介性の植物病原ウイルス病による作物被害を防除する技術開発が求められている。一方、昆虫媒介で感染・増殖しているウイルスは、宿主昆虫のRNA干渉反応を阻害する因子(VSR)を産生することで、昆虫の抗ウイルス作用を回避していることから、このウイルス因子の機能阻害技術が開発できれば、ウイルス媒介昆虫を標的としたウイルス伝播を阻止できる画期的な技術となりうる。本研究では、こうした技術開発に不可欠な基礎的知見を得るため、重要昆虫媒介性植物病原ウイルスを対象とし、宿主昆虫体内で機能するウイルスVSRの同定および分子機能解明を試みることを目的とする。 今年度は、ショウジョウバエ由来のS2培養細胞を用いたVSRアッセイ系を用いて、トビイロウンカが媒介するイネラギットウイルス由来のS6na、イネグラッシーウイルス由来のp2NS、ツマグロヨコバイが媒介するイネ萎縮病ウイルス由来のsegment10、ヒメトビウンカが媒介するイネ縞葉枯病ウイルス由来のNS3に着目し、VSRの機能を有するかについて調査した。まず、S2細胞にルシフェラーゼのレポータープラスミドを、ルシフェラーゼ遺伝子を標的とする二本鎖RNA発現プラスミドとともに導入すると、ルシフェラーゼ遺伝子のノックダウンが観察された。これに各ウイルス由来産物の発現プラスミドをさらに導入し発現させたところ、p2NSおよび、segment10の発現プラスミドを導入させたときに、有意なノックダウンの阻害が観察された。p2NSおよび、segment10については、二本鎖RNA発現プラスミドの代わりに二本鎖RNAを導入した場合でもノックダウンを阻害する効果があることが分かり、これら因子はVSRとしての機能を有することが示唆された。さらに、segment10については、カイコ培養細胞を用いたアッセイ系でも同様にVSR活性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回着目したウイルス由来の他の因子及び、昆虫媒介性の他のウイルス由来の因子にも着目し、ショウジョウバエ培養細胞およびカイコ培養培養を用いてVSR活性の有無について解析を進める。また、VSR活性の見られたイネ萎縮病ウイルス由来のsegment10及びイネグラッシーウイルス由来のp2NSについてはRNA干渉経路のどのステップを阻害するかについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
計上していた旅費については、研究代表者が学会発表を行わなかったこと、また当初予定していた契約職員の雇用を行わなかったこと、さらに、一般試薬、酵素類、培地については当初の予定よりスケールダウンしての検定等が可能だったことなどから、次年度使用額が生じた。これらについては、研究をさらに進めるため、契約職員の雇用に当てるなどして、翌年度以降に使用する予定。
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