2019 Fiscal Year Research-status Report
Generic cell ablation system: sterile-insect technique for control of infectious disease vector and prevention of leakage of beneficial insect strains
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17K08161
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
笠嶋 めぐみ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (90458290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 大介 自治医科大学, 医学部, 講師 (90597189)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遺伝子ノックイン / ゲノム編集 / 組織特異的発現 / 不妊化 / SIT |
Outline of Annual Research Achievements |
バイナリシステムあるいは組織特異的発現プロモーターを利用した細胞死誘導は、基礎研究および昆虫の遺伝的防除方法への応用に有用である。我々は、哺乳動物のBaxを組織特異的に発現誘導することによって限定的に細胞死を誘導できることを示した。今年度は、新たなエフェクター因子を発現するカイコ系統の作成を行った。この遺伝子はカイコ由来の遺伝子で、機能については未だ明らかになっていないが、核の転写の子ファクターとして主に、代謝関連遺伝子の調節に関わっていると想定された。この遺伝子のC末端配列のみをベクターに組み込み、カイコに導入した。GAL4依存的にこの遺伝子を絹糸腺に特異的に発現させたカイコの幼虫では、繭を生産することができなかった。このことから、この遺伝子の過剰発現によって細胞障害が誘導されることがわかった。我々がこれまでに作成したエフェクター遺伝子は、発現すると細胞死するので、その遺伝子の発現を厳密に調節する必要があったが、今回開発した遺伝子は、細胞毒性としては弱いので、多少のリーク発現は無視できると考えられ、既存のプロモーターによるGAL4発現による不妊化も可能であると考えられた。 また、新たなGAL4発現系統の作成のため、生殖細胞発現遺伝子の上流域にGal4遺伝子を導入する実験を行った。はじめにこの部位を効率よく切断するTALENベクターの作成を行った。このTALENを用いてノックアウト系統を作出できるか確かめた。いくつかのKOカイコ系統が得られたがいずれも、6かあるいは9塩基の欠失であり、挿入のあるものそれ以上の欠失があるものは得られなかった。このことは、この遺伝子が必須遺伝子であり、この領域への外来遺伝子の導入が難しいことを示している。実際に、外来遺伝子の挿入を同時に試みたが、挿入系統は得られなかった。そこで、次年度には導入位置を改めて実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、カイコ胚へのインジェクションを実施したが、選択した遺伝子領域を効率的に切断できるものの、外来遺伝子挿入個体を得ることができなかった。これは、この遺伝子が必須遺伝子であり、挿入操作により遺伝子の働きを阻害してしまうことによると考えられた。計画を見直し、再度実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
カイコでは、構造遺伝子などをターゲットとした場合、狙い通りの位置に外来遺伝子を導入でき、組換え系統を得ることもできるようになってきた。本研究では、生殖組織特異的に発現する遺伝子を標的としているが、その遺伝子の機能を阻害すると個体が得られない(系統が維持できない)ため、計画がうまく進んでいなかった。そこで、標的とする遺伝子領域については上流域や比較的長いエンハンサーなどの領域に絞りGAL4の導入を試みる。また、病気媒介昆虫など他の生殖巣特異的遺伝子の同定とゲノム編集による変異体作成についても研究を行う。ハマダラカについては、性分化遺伝子の機能解析を進めており、不妊化技術開発に応用できる遺伝子として適していることがわかってきた。これらの遺伝子のTALENを設計し、遺伝子を破壊したKO系統の作出には成功しているので、表現型の解析をすすめ、遺伝子機能を明らかにする。 部位特異的ノックインによるGal4系統の樹立が困難であるので、上記のようなターゲットの遺伝子のノックアウトによる機能解析を進めつつ、これらの遺伝子のプロモーター領域を単離する実験を進めている。このプロモーターによって調節されるGal4を発現するカイコ系統を作出する。次に、エフェクター発現系統と交配し、研究期間内にエフェクターによって不妊となるような仕組みの開発を目指す。プロモーターの単離には、昆虫間のゲノムの比較によって調節領域を同定するなど、近年、入手が可能となった様々な昆虫のデータも参照しながら効果的な調節領域の分取を目指す。少なくとも、ゲノム配列比較によるプロモーター領域の分取は実施できる。
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Causes of Carryover |
実験計画が遅れていたことから、成果発表を行う場と当初予定していた学会から令和2年度7月に開催される国際学会に変更することにしたので、旅費として計上していた予算を繰り越すこととした。また、実験計画の遅れにともない、使用予定の消耗品も年度内に調達するのではなく、令和2年度に購入する予定とした。実験試薬およびキット類に関しては、実験の進行に伴って順次購入するので、今年度、遅ればせながら予定通りに予算消化ができる見込みである。
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