2018 Fiscal Year Research-status Report
穂発芽耐性遺伝子の単離と機能解明によるイネの環境適応力強化
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17K08164
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
星野 友紀 山形大学, 農学部, 准教授 (20530174)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 穂発芽耐性遺伝子 / QTL / TILLING / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で着目する穂発芽耐性量的形質遺伝子座qSdr6aについて、研究が進展したので報告する。qSdr6aの候補領域に予測される遺伝子は無かったことから、qSdr6aは近傍の遺伝子発現を制御すると考えられた。そこで、コシヒカリ(Ksh)とNILを対象に、qSdr6aの近傍に位置する遺伝子の発現解析を行った。その結果、GeneXの発現は登熟後期の吸水時にKshと比べてNILで有意に低く、GeneYの発現は登熟初期の吸水時にKshと比べてNILで有意に高かった。以上の結果から、qSdr6aの候補遺伝子はGeneXかGeneYのいずれか、あるいは両者であると考えられた。 RAP-DBより、GeneXは機能未知のタンパク質をコードしていたが、KshとNILともに登熟に伴ってその発現量が増加すること、TAIRよりGeneXの相同遺伝子がシロイヌナズナの芽生えで発現していることから、qSdr6aは登熟後期に発芽を促進するGeneXの発現を負に制御し、穂発芽耐性を付与することが推察された。この仮説は、KshとNIL間で登熟初期における発芽抑制因子Sdr4やDOG1Lsの発現量に有意な差がなかった事からも支持される。KshとNIL間で登熟後期における発芽促進因子GA20ox1やHB20の発現量に有意な差がなかったことから、GeneXは新規な経路で発芽を促進すると考えられるが、そのメカニズムの解明にはさらなる解析が必要である。一方、GeneYについては、TILLING法で単離した複数のgeney突然変異体が易発芽性を示したことから、qSdr6aの責任遺伝子はGeneYであることが強く示唆された。 これまでの研究によって、穂発芽耐性メカニズムの一端が解明されたとともに、得られた新規な穂発芽耐性遺伝子(座)の育種利用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、穂発芽耐性量的形質遺伝子座qSdr6の候補領域の絞り込みに成功した。特にqSdr6aについては、候補領域の近傍に位置する遺伝子発現解析と、TILLING法を用いた逆遺伝学的解析によって、責任遺伝子を2つまで特定することに成功した。これは当初の計画通りである。 一方、qSdr6bについては、さらに候補領域を絞り込むために、新規な実験系統の作出を試み、これまでにBC5F2 1万個体から候補領域220kbp内に組換えを有する20系統の選抜に成功した。これも、当初の計画通りである。 これまでの成果は、H30年度において、日本育種学会第134回講演会、第13回東北育種研究集会、東北植物学会第8回大会にて、研究発表を行い、そのうち1つの大会では、研究成果が認めれれ優秀発表賞を受賞した。 以上より、これまでのところ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、新規となる穂発芽耐性量的形質遺伝子座の責任遺伝子の同定を試み、得られた遺伝子の機能解析によって、イネにおける穂発芽耐性メカニズムを考察する。 qSdr6aについては、責任遺伝子候補として同定された2つの遺伝子について、TILLING法による突然変異体の選抜と表現型調査を行い、どちらが真に穂発芽耐性遺伝子であるか、特定する。さらに、これまでに明らかにされている、発芽関連遺伝子の網羅的な遺伝子発現解析によって、得られた遺伝子の機能を推察し、イネにおける穂発芽耐性メカニズムを考察する。 一方、qSdr6bについては、新規に得られたBC5F2 20系統に発芽試験を行い、さらなる候補領域の絞り込みを行い、責任遺伝子を特定する。候補となる遺伝子が特定されれば、qSdr6aと同様に、TILLING法による突然変異体の選抜と表現型調査を行い、候補遺伝子が真に穂発芽耐性遺伝子であるか、特定する。 最終的に、本研究によって、イネにおける穂発芽耐性メカニズムの一端を解明するとともに、得られた新規な穂発芽耐性遺伝子(座)の育種利用を促進させたい。
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