2018 Fiscal Year Research-status Report
微生物燃料電池の発電を促進させる新規金属系アノードの開発
Project/Area Number |
17K08175
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山下 恭広 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (60547719)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 微生物発電 / 金属系アノード / 生物膜 / Geobacter / モリブデン / タングステン |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物燃料電池は、微生物による有機物の酸化により電気エネルギーを直接生産できる技術であるが、現状の出力が低いため実用化に至っていない。そこで、本研究では、微生物燃料電池の出力を向上させる新しい金属系負極(アノード)の探索を行った。これまでに、金属素材のスクリーニング試験(40種類以上、鉄、アルミ、銅、チタン、スズなど安価な金属の酸化物、酸化の方法の違いによる延べ数)を行った結果、微生物燃料電池の出力を向上させる金属系負極としてはモリブデンが最も適していることを特定することが出来た。本年度は、アノードの表面に形成した生物膜の菌叢を次世代シーケンサーにより解析した。微生物燃料電池の金属系負極に使用可能な金属素材の中でも高出力が得られたモリブデンと、比較対照としてタングステンに対して、未処理、酸による陽極酸化、アルカリによる陽極酸化、炎酸化を施した電極の各4種類に付着した生物膜の菌叢解析を行った。その結果、モリブデン電極の4種は、属レベルでは発電細菌として知られているGeobacterが全体の45~58%で検出され、タングステン電極4種の3~21%よりも倍以上高い割合であった。このことから、他の金属素材よりもモリブデン電極ではGeobacterが多く増殖することにより高出力が得られたと推定された。Geobacterが酸化タングステンや酸化モリブデンを還元する能力があるという報告はないが、電極内部に電子を受け渡すことが出来たと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物燃料電池の出力を向上させる新しい金属系負極(アノード)の探索を行い、金属素材としてモリブデンが最も適していることが明らかとなり、そのアノードに付着した生物膜には、発電細菌として知られているGeobacterが多く検出された。菌叢解析の結果からもモリブデンが有利であることが示された。従って、本年度も研究はおおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的であった微生物燃料電池の発電を促進させる新規金属系アノードとしては、スクリーニングを行った結果、モリブデンが微生物燃料電池のアノードとして最も適していることが明らかとなった。そのため、今後は更なる出力向上のために電極の形状や構造に着目した試験等を実施する。
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Causes of Carryover |
理由:繰越金は、研究資材を自作する等の工夫により研究費を効率的に使用し発生した残額である。 使用計画:本研究課題の推進のため、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費、人件費・謝金に使用する。
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