2018 Fiscal Year Research-status Report
硝酸系肥料の利用による農耕地土壌からの一酸化二窒素排出削減技術の開発
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17K08178
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
西村 誠一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (70354090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 正一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (20354128)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一酸化二窒素 / 一酸化窒素 / 硝化 / 脱窒 / 酸素濃度 / 被覆硝酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中での硝化による一酸化二窒素(N2O)生成の温度依存性を明らかにするために、室内土壌培養試験(密閉法)を、昨年度より継続して行った。3種類の肥料を用いて、培養温度2段階(15℃および25℃)、土壌水分は含水比(水分/固相)40%で、試験を行った。 計91日間の試験でのN2O総発生量は、温度15℃では被覆尿素(70日溶出タイプ)区が硫酸アンモニウム区の67%であったのに対して、温度25℃では201%となった。このことは、高い温度条件下では被覆尿素からのN2O発生が通常のアンモニウム系肥料よりも高くなる場合もあることを示している。一方、被覆硝酸カルシウム(70日溶出タイプ)区からのN2O発生は、温度条件に関わらず無窒素区とほぼ同等であり、被覆硝酸系の肥料がN2O排出削減のために非常に有効な肥料資材であることが、あらためて示された。 低酸素(O2)濃度条件が土壌内での脱窒およびN2O生成に与える影響を直接明らかにするために、昨年度より予備試験をしていた通気式ガスフラックス連続測定システムを用いて、土壌培養の本試験を行った。系内のO2濃度を徐々に低下させて、N2Oおよび一酸化窒素(NO)フラックスを同時にモニタリングした。N2O,NOフラックスはともに、O2濃度が0.1%よりも低くなったときにのみ観測された。含水比40%では、O2濃度をさらに低下させるにしたがってN2O,NOフラックスは共に増加した。一方、含水比70%では、O2濃度が約0.01%でN2O,NOフラックスは共に飽和に達し、O2濃度をそれ以下に低下させても更なるフラックスの増加は観測されなかった。この試験結果は、実際の圃場においても、降雨後等に土壌内間隙のO2濃度が局所的に0.1%以下になったときに、脱窒によるN2O生成が大きく促進されている可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌培養試験(密閉法)については、本試験の結果を一とおり取りまとめて、硝化由来の一酸化二窒素発生に及ぼす温度環境の影響を、明らかにできた。 土壌培養試験(通気法)についても、フラックス測定の本試験を行い、低酸素濃度条件での脱窒および一酸化二窒素フラックスの詳細な動態を、明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
土壌培養試験(密閉法)については、条件を変えてさらに試験を重ねて、硝化由来の一酸化二窒素発生に及ぼす被覆肥料の効果の詳細を明らかにする予定である。 土壌培養試験(通気法)についても、条件を変えてさらに試験を行い、脱窒由来の一酸化二窒素および一酸化窒素発生に及ぼす、土壌内酸素濃度と施用肥料との複合的な効果を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
ガス採取・分析、無機態窒素分析等に用いる消耗品の支出の一部を他の研究課題や他の使用者と折半することにより、当初の計画よりも支出が低く抑えられた。 次年度使用額40,302円は、密閉法・通気法によるガス分析のための部品の購入に使用し、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(1 results)