2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the installation model of green infrastructure for adaptation to climate change
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17K08180
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木下 剛 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (30282453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 彩子 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (80544535)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グリーンインフラ / 戦略的計画 / 機能評価 / ニーズ評価 / 土地利用型グリーンインフラ / 地形 / 水害リスク / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウィルス感染拡大により当初予定した海外調査は不可能となり、研究計画を変更した。大きな変更点は以下の二点である。①海外都市におけるグリーンインフラ(以下GI)の導入実態について、現地調査ではなくインターネットでの情報収集を通じて把握した。②令和元年度に続き、海外より日本でのGIの導入実態・導入可能性に重きを置いて調査・研究を行った。 ①については、大ロンドン行政庁(GLA)が2018年に公開したグリーンインフラフォーカスマップの取組を検討した。このマップは、GLAの行政区域内でGIが提供できる13機能のうち、どれがどの程度不足しているか(ニーズ)をマルチスケールで階層的に把握できるようにしたものである。筆者は既に英国リバプール市のGI戦略で、GIのニーズを小地域のスケールで可視化する計画方法論を検証したが、GLAの手法は、現存するGIのタイプや機能の評価を行わずにGIのニーズを評価している点でリバプールの手法と異なる。GLAの手法は、現存するGIのサービスを評価していない点で厳密性に欠けるとはいえ、より簡便にニーズ評価が行える(どこでどのようなGIがどの程度必要とされているかを多様な空間単位において示せる)という点で、行政事務に適した手法といえる。この取組はGIの導入例ではないが、当該地域に求められるGIの機能を客観的に明らかにすることで、GIの導入を戦略的に進めていける手法といえる。 ②については、水害リスクの低減に資するGIの導入例として、長期の生存が確認される定住地(大字)の農業的土地利用に着目し、地形や水害リスクとの関係について検証した。その結果、地域社会によって古くからの農業的土地利用が維持されることで、水害リスクを制御できる可能性が明らかとなった。これらは、GIの取組というものが過去に遡及でき、かつ共的な生産活動の中で導入され、維持されてきたことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルスの感染拡大により、内外の現地調査・聞き取り調査が行えなかったことによる。このため、科学研究費補助事業(学術研究助成基金助成金)の補助事業期間を再延長してもらうとともに研究方法等も見直し、制約下で実施可能な研究内容とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の今年度は、国内の現地調査と可能な範囲での聞き取り調査を実施し、それらの結果をふまえこれまでの研究成果を取りまとめる。具体的には、気候変動がもたらす様々な課題の中で、特に水害の緩和・適応に資することを意図したGIの導入モデルの検討を行う。この検討は敷地レベル(戦術)と広域レベル(戦略)の二段階で行う。広域レベルの検討を行う理由は、それが敷地レベルでのGIの導入可能性を高める要因となり得る、という仮説に基づく。 敷地レベルでのGIの導入については、引き続き、洪水調整機能を備えた公園・緑地等の事例調査を行い、それを可能とした条件について把握する。また既往事例をふまえ、今後洪水調整機能を備え得る可能性のある都市公園等に着目し、具体的な機能実装の方法や利用・管理のあり方について検討する。 広域レベルでのGIの導入については、内外の地方公共団体がその行政区域等を対象として策定する各種基本計画・基本戦略を取り上げ、GIの概念や取組を計画にどのように位置づけているのか、また敷地レベルでのGIの導入をどのように計画に位置づけているのかについて把握する。流域治水の考え方も視野に入れ、行政区域にとらわれないGIの広域計画のあり方についても検討する。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」に記載したとおり、内外の現地調査、特に海外調査が実施不能になったことにより、研究費の次年度使用が生じた。これについては、研究分担者や研究協力者(学生等を含む)を含め、国内の現地調査および聞き取り調査を可能な限り実施することで使用する予定である。
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