2017 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンシグナルによる膜交通制御と環境ストレス適応機構の解明
Project/Area Number |
17K08190
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 長緒 北海道大学, 理学研究院, 助教 (50609724)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膜交通制御 / ユビキチンシグナル / 環境ストレス適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,膜局在型ユビキチンリガーゼATL31が膜交通制御因子SNAREの機能制御に関わるという発見を突破口に,植物の優れた環境ストレス適応機構の分子基盤を明らかにする。膜交通系は,細胞膜上の環境シグナル受容体・伝達因子や輸送体の機能制御に重要な役割を果たす。その一方で,環境シグナルに応じた膜交通系構成因子自体の機能変換に関する知見はほとんど無い。本研究は,環境シグナルに応じた細胞内「膜交通システムの制御」という新たな観点で,植物の栄養ストレス適応および病原体抵抗性強化に関わる分子実態の解明を目指す。以下に示す3つの研究課題に取り組む。1)ATL31によるSYP61のユビキチン化と細胞内局在制御機構の解明, 2)ATL31とSYP61によって制御される積荷の同定, 3)ATL31によるSYP61を介した膜交通制御の生理学的意義の検証。 当該年度は,植物細胞内におけるSYP61ユビキチン化に関する詳細な解析を行い,SYP61に付加されるユビキチン鎖型の特異性について明らかにした。これは細胞内におけるSYP61ユビキチン化の意義を考えるうえで重要なデータとなる。また,in vitroの解析から,ATL31は直接的にSYP61をユビキチン化することを突き止めた。さらに,新たに作出したsyp61ノックダウン変異体を用いたC/N応答解析から,SYP61が植物のC/N栄養応答において重要な機能を有することを示した。これらの研究結果から,ユビキチンシグナルを介した細胞内膜交通制御の分子実態や生理的意義に関する理解が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を構成する3つの実験課題に関して,いずれも当初予定していた進捗が見られた。特に,SYP61のユビキチン化に関してはin vivoおよびin vitroいずれの解析でも重要な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
SYP61が制御する積荷の解明に必要な植物材料および手法の検討が進んでおり,今後はこの点に関してより精力的に進める。また,作出に成功したsyp61ノックダウン変異体に関して,病原体応答も含めた多角的かつより詳細な解析を進める。さらに,ユビキチン化部位に変異を導入したSYP61の生化学的および生理学的機能解析を進めることで,ユビキチン化による細胞内膜交通制御の全容解明を目指す。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた試薬の納期に合わせて、次年度へ繰り越した。次年度4月に購入する。
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