2019 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of RNA binding PPR proteins involved in posttranscriptiona regulation of chloroplast
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17K08195
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉田 護 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (70154474)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA結合タンパク質 / PPRタンパク質 / 葉緑体 / 遺伝子発現制御 / RNA安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体遺伝子の発現制御におけるペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質ファミリーの分子機能を解明することを目的として、PPR遺伝子ノックアウト株の作製と機能解析、標的RNA分子の同定を行った。本年度はヒメツリガネゴケの2種のPタイプPPRタンパク質(PpPPR_64とPpPPR_32)の機能解明について大きな進展があった。 (1) PpPPR_64遺伝子ノックアウト変異株(KO株)では光化学系Ⅱクロロフィル蛍光強度収率が低下し、光化学系超分子複合体の形成が不完全であることを明らかにした。その要因について詳細に解析した結果、KO株では光化学系1の反応中心サブユニットをコードするpsaA-psaB遺伝子の発現レベルが野生株の3分の1に減少していることを明らかにした。このことから、PpPPR_64はpsaA-psaB遺伝子の転写または、psaA-psaB mRNAの安定性に働いている可能性が高いことが示唆された。 (2) PpPPR_32 KO 株では、光化学系 I の形成に必要な ycf4 と、光化学系 I のサブユニットをコードする psaC, psaJ の転写物の蓄積量が減少していることを見出した。3 つの遺伝子は光化学系 I 複合体形成に必要な遺伝子であるため、 KO株で生育遅延が起こり、光合成活性が低下したという結果と一致する。これらの結果より、PpPPR_32 は葉緑体ゲノムの 3 つの遺伝子(ycf4, psaC, psaJ)の蓄積に必要であることが示唆された。また、ycf4, psaC, psaJの遺伝子それぞれに PpPPR_32が結合可能であると予測される配列が存在する。標的遺伝子に対する PpPPR_32 の機能として、転写物の安定化の制御、または転写の制御に関わっている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究はほぼ予定通り順調に進み最終段階の遺伝子発現解析を行っていたが、本研究で用いているリアルタイム定量PCR装置(共同利用機器)の故障により解析が当初計画より遅れた。このため解析データの取得と研究成果のまとめに 2020年度までかかる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
PpPPR_64とPpPPR_32の標的遺伝子をもれなく同定するため、葉緑体ゲノムタイリングマイクロアレイを駆使した解析を進める。さらに標的分子に結合するRNA領域をRNA electrophoresis mobility shift assay (REMSA)により決定する。
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Causes of Carryover |
今年度の成果の一部をオープンアクセス論文として発表する予定だったが論文投稿の準備が大幅に遅れた。このため論文掲載料分の余剰が生じた。次年度は論文をオープンアクセスにするため、余剰分をオープンアクセス料に充てる計画である。したがって、次年度は論文掲載料(50万円)、消耗品代(10万円)、その他(10万円)に使用する計画である。
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