2018 Fiscal Year Research-status Report
葉の老化制御メカニズムの解明と農作物への応用を目指した基盤研究
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17K08196
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松岡 大介 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 講師(研究機関研究員) (60437506)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジャスモン酸シグナル / サリチル酸シグナル / 老化制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化は生育に伴う内生的な刺激や環境の変化(ストレス)により制御されているが、植物ホルモンはそれらのシグナルを伝達する上で重要な機能を担っている。これまでにサイトカイニン、エチレン、オーキシン、アブシジン酸、サリチル酸やジャスモン酸など数多くの植物ホルモンの関与が示唆されているが、その仕組みは複雑で未解明の部分が多い。本研究では老化の開始や進行を制御する分子メカニズムを解明し、農作物の増収や収穫後の品質保持やコスト削減を可能とする新品種の作出のための基盤研究を行うことを目的としている。これまでにMAPKKK18-MKK3-MPK1/2/7/14がMAPKカスケードを形成し老化を制御していることを、分子生物学的あるいはMAPKKK18過剰発現植物の表現型解析により明らかにしてきた。今年度は野生型シロイヌナズナ及び35SMAPKKK18のDNAマイクロアレーによる網羅的解析により得られた変動遺伝子およびタンパク質の機能を、これまでに報告があるものについては文献等により精査し、それらの中で各種ホルモンの合成やシグナル系に関連する候補遺伝子およびタンパク質の絞り込みを行った。さらに定量的RT-PCRにより、これら候補遺伝子の発現を確認した。さらにMAPKKK18と相同な遺伝子であるMAPKKK17について作製した過剰発現植物についてもDNAマイクロアレーによる網羅的解析を行い、MAPKKK18過剰発現植物の発現解析の結果との比較をすることで、老化に関連する候補遺伝子のさらなる絞り込みに成功した。現在これらの遺伝子の機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MAPKKK18と相同な遺伝子であるMAPKKK17について同様に過剰発現植物を作製することに成功し、その表現型の調査を行った。これらの成果は学術論文において報告した。また、MAPKKK17過剰発現植物についてもDNAマイクロアレー解析により、変動する遺伝子を解析し、MAPKKK18過剰発現植物で行った結果と比較することで老化に関連する候補遺伝子のさらなる絞り込みに成功した。現在これらの候補遺伝子の機能を解析するため、各種ストレス処理を行ったシロイヌナズナでの遺伝子発現の解析やこれら候補遺伝子過剰発現植物や遺伝子破壊株の作製に取り掛かっている。これらの研究により、本研究の目的とする葉の老化制御メカニズムの解明へとつながると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続するとともに、網羅的解析により得られた候補遺伝子やタンパク質の過剰発現体や遺伝子欠損体を作製しその表現型(特に葉の老化に対する影響)を調査すると共に、各種ホルモン(アブシジン酸、エチレン、サリチル酸、ジャスモン酸)およびストレス(暗黒、乾燥、低温)に対する応答を評価する。また不活性型MAPKKK18過剰発現による老化抑制を利用した高収量作物作出のための基盤研究として、誘導発現系の構築による老化制御を行なうため、以下の研究を実施する。特定の時期にのみ発現するようにシロイヌナズナを用いて誘導発現系を構築し葉の老化に対する影響を調査する。用いる発現系はシロイヌナズナでよく使用されているデキサメタゾン(DEX)誘導系および老化得意的発現遺伝子であるSAG12遺伝子プロモーターを予定している。それぞれのプロモーターの下流にMAPKKK18KN遺伝子を連結した植物形質転換用ベクターを構築し、アグロバクテリウム法によりシロイヌナズナに導入し、形質転換植物を作成、その表現型を評価する。 また本研究のもう一つの目的である、コマツナへの導入に取り掛かる。コマツナはシロイヌナズナと同じアブラナ科に属し、また申請者がこれまでクローニングした複数のリン酸化酵素遺伝子についてもその相同性が高いことが分かっている。またコマツナの形質転換については胚軸を外植片としたアグロバクテリウム法が確立されており、ベクターについても申請者がすでに構築したpBI121ベクターを利用したMAPKKK18KN発現ベクターおよび上述の誘導系ベクターも使用可能である。作成したコマツナの収量および収穫後の葉の黄化に関する表現型を調査する。
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