2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel multi-component synthesis of 1,4-dihydropyridines by auto-tandem catalysis
Project/Area Number |
17K08207
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉本 健士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (60400264)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ジヒドロピラゾール / ジヒドロピリジン / ピリジン / カチオン性金触媒 / オートタンデム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,4-ジヒドロピリジン誘導体は多岐に渡る薬理作用を有することが知られ、その作用の制御には環状構造をなす五つの炭素上の置換基を適切な配置が重要である。そこで、金錯体のオートタンデム触媒作用により、置換基の導入位置を高度に制御した一般性の高い新規多成分集約型1,4-ジヒドロピリジン構築法を確立すべく研究を進めてきた。初年度には、当初1,4-ジヒドロピリジンであると推定していたカルバゼート由来の生成物が、実際にはジヒドロピラゾールであることをX線結晶構造解析によって明らかとした。本反応では、1分子のカルバゼートと1分子のプロピオレート誘導体から1-アザブタジエンを形成する過程、および、これが1分子のプロピオレート誘導体との6π-電子環状反応によってジヒドロピラゾールへと変換される過程、いずれにおいても金触媒が関与することを突き止めていた。また、イミン由来の生成物についても同様に単結晶を生成させることに成功し、X線結晶構造解析により、当初の推定通り1,4-ジヒドロピリジンであることを確認していた。 2018年度は、このジヒドロピリジン形成反応の中間体について、単結晶作成の検討を行い、得られた単結晶のX線結晶構造解析により、カルバゼートを基質とした際と同様に1-アザブタジエンを形成していることを確認することができた。現在までに、金オートタンデム触媒作用による1分子のイミンと2分子のプロピオレートの三成分連結反応の条件の最適化を終え、NHC配位子を有する金錯体存在下、79%という良好な収率で1,4-ジヒドロピリジンへと変換されることが判明している。また、同様のオートタンデム触媒反応により、より酸化段階の高いピリジン誘導体の構築が可能となると期待し、新たにオキシム誘導体を基質とする反応系を設計し、検討した結果、対応する1-アザブタジエンを良好な収率で与える条件を見出すことにも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種スペクトルの解析では決定困難であった反応中間体および生成物の真の構造をX線結晶構造解析によって間違いなく決定とすることに成功しており、2種のオートタンデム触媒作用による多成分集約型ジヒドロピラゾール形成反応およびジヒドロピリジン形成反応について、その最適条件の確立を達成している。興味深いことに、X線結晶構造解析によって、イミン由来の1-アザブタジエンの二重結合の幾何異性が、カルバゼート由来の1-アザブタジエンとは全く逆転していることが確認されており、1-アザブタジエン形成過程において置換基の電子状態を反映した4π-電子環状反応が介在することを示唆する有益な知見を得ることができた。反応機構の解明に大きな前進が見られた。さらに、より酸化度の高いオキシム誘導体でもプロピオレートとの間で1-アザブタジエンが形成可能であることを見いだすことができ、ピリジン合成法への展開に端緒をつかむことに成功した。以上のことから、研究が順当に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1,4-ジヒドロピリジンを与えるイミンを基質とする多成分集約型の反応について、本反応の一般性の拡張を目指す。すでにイミンについては4種類の原料から目的とする1,4-ジヒドロピリジンが得られることを確認しているが、イミン上の置換基の性質によっては、環内二重結合の異性化を経て1,2-ジヒドロピリジンも同時に生成するという興味深い結果を見出しているため、この現象について詳細な研究を進める予定である。 また、原料としてイミンよりも酸化度の高いオキシム誘導体を用いた多置換ピリジン形成について検証を開始しているが、現在までに1-アザブタジエンの形成まで良好な収率で進行する条件を見出していることから、X線結晶構造解析によってその幾何異性を明らかとすると同時に、環化付加反応に適するジエノフィルの探索を進めて、ワンポット多置換ピリジン合成法を確立する予定である。 以上のように、カチオン性金錯体のオートタンデム触媒作用によって1-アザブタジエン形成と、続くペリ環状反応がワンポットで実現され、多置換ジヒドロピラゾール、多置換ジヒドロピリジン、多置換ピリジンなどを包括した多置換含窒素複素環の効率的構築法として有効であることを実証する。
|
Remarks |
・杉本健士.連続反応を基盤とした含窒素複素環の新規構築法の開発.平成30年度富山医薬品化学研究会第17回研究会, 2018 Aug 31, 富山(依頼講演)
|
Research Products
(17 results)