2017 Fiscal Year Research-status Report
配位子による位置選択性制御を活用した新規触媒反応の開発と多置換化合物合成への展開
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17K08214
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
山口 深雪 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (70548932)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 配位子 / パラジウム / 位置選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、基質捕捉型配位子であるジヒドロキシターフェニルホスフィン(DHTP)を開発し、様々な位置選択的反応に用いてきた。DHTPとパラジウムから成る触媒を用いると、入手容易なジクロロアニリン類と末端アルキンのオルト位選択的薗頭カップリングと環化によりクロロインドールが得られることを既に報告している。そこで、同触媒を用いる位置選択的反応を活用し、多置換インドール類の合成について検討した。 まず、2,4,6-トリクロロアニリン誘導体から3つの異なる置換基を有する2,5,7-三置換インドール類の合成を行った。反応条件を種々検討した結果、N-アセチル-2,4,6-トリクロロアニリンを基質として用いると、アミノ基のオルト位選択的に薗頭クロスカップリングが進行し、続く環化により5,7-ジクロロインドールが得られた。さらに、本触媒を用いて5,7-ジクロロインドールの熊田-玉尾-Corriuカップリングを行うと、反応はC7位選択的に進行し、5-クロロ-2,7-二置換インドールを得た。最後にC5位のクロロ基を変換することで、3つの異なる置換基を有する2,5,7-三置換インドール類を得た。 また、クロロアレーンを用いるN-無置換インドールのC-Hアリール化を検討した。その結果、本触媒を用いるとインドールのC3位でC-Hアリール化が選択的に進行し、C3-アリール化体が得られることを見出した。一方、DHTP以外の配位子では、N1位選択的に反応が進行しN-アリール化体を得た。DHTPのヒドロキシ基がリチウム塩を介してインドールを捕捉することで、インドールのC3位での反応が加速され、他の配位子と異なる位置選択性を示したと考えられる。本合成法により、様々なクロロアレーンをインドールのC3位に導入した。さらに興味深いことに、3-メチルインドールを基質として用るとC3―二置換インドレニン)が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、パラジウム―DHTP触媒を用いる位置選択的反応の開発の一環として、これらの位置選択的反応を活用する2,4,6-トリクロロアニリン誘導体から3つの異なる置換基を有する2,5,7-三置換インドール類の合成を行った。同触媒を用いる位置選択的反応を活用することで、様々な-三置換インドール類を得ることに成功した。そして、得られた成果をまとめ、論文として発表した。また、学会発表を行った。 また、同触媒を用いるクロロアレーンを用いるN-無置換インドールのC3位選択的C-Hアリール化の開発を行い、得られた成果を論文として発表した。 これらの合成や反応は、DHTP以外の他の配位子を用いる反応の結果との比較を行い、基質捕捉型配位子DHTPを用いることで初めて可能となるものであることも示すことができた。 加えて、クロロアレーンを用いるN-無置換インドールのC3位選択的C-Hアリール化の検討結果を基に、インドール以外の基質を用いる反応についても検討を行ったところ、他の基質においても位置選択的に反応が進行する例を見出した。平成30年度には、これらの反応についてより詳細に検討を行っていく予定である。 また新規配位子の開発においては、新たにチオフェン環を有するDHTP類縁体を合成した。合成した配位子を用いて様々な反応を行ったところ、DHTPやこれまでに合成したナフタレン環を有するDHTP類縁体とは異なる反応性・位置選択性を示すことが明らかとなった。平成30年度には、これらの反応についてさらに詳細に検討を行っていく予定である。 一方、これらの反応の機構解明については、NMRや質量分析による中間体の検出の難しさから目立った成果が得られなかった。今後、反応中間体を検出するためにさらなる工夫と検討が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は以下の項目について検討を行っていく。 (1)パラジウム―DHTP触媒を用いるN-無置換インドールのC3位選択的C-Hアリール化について、現在の反応条件では低収率にとどまっている基質が存在する。そこでそれらの基質について、反応条件の詳細な検討を行い、基質一般性の拡大を目指す。また、インドール類以外に、ピロール類などを基質とした位置選択的アリール化の開発にも取り組む。 反応機構の解明については、基質や測定条件をさらに検討し、NMRや質量分析法を用いた反応中間体の検出を引き続き検討する。また、速度論的検討も行う。 (2)N-無置換インドールのC3位選択的C-Hアリール化の検討過程で得られた成果をさらに発展させ、3-置換インドールからのC3二置換インドレニン合成法の開発に取り組む。現在のアリール化の反応条件ではC3二置換インドレニンの収率は中程度にとどまっていることから、反応条件を最適化することで収率の向上を目指す。加えて、様々な基質を用いた合成も行い基質一般性の拡大を目指す。また、3-置換インドール類以外に、置換基を有するピロール類などを基質とした反応の開発に取り組む。 (3)これまでに開発したパラジウム―DHTP触媒を用いる位置選択的反応を活用し、様々な多置換ベンゾフラン類やインドール類の合成を行う。複数の合成ルートを検討することで、1つのルートでは達成できない多様な置換パターンを有するベンゾフラン類やインドール類を得ることを目指す。 (4)新規基質捕捉型配位子の開発については、これまでに合成したナフタレン環やチオフェン環以外の異なる骨格を導入した配位子をDHTPの合成ルートを参考にして合成する。それらの得られた配位子について、反応性や位置選択性を様々なモデル反応を用いてDHTPや他の配位子と比較検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度は、研究室にすでにあったガラス器具や装置などを多く活用して研究を行うことができたため、これらを購入した金額が当初の予想よりも少なかった。また、支出のほとんどが試薬類や消耗品であり、それらについても当初の予想よりも支出が少なかった。また、平成29年度はこれまでの研究成果を学会において発表する機会が少なかった。 (使用計画) 平成30年度はこれまでの研究をさらに発展させるため、実験を行うにあたり必要となる様々な試薬類、ガラス器具、装置などを購入する予定である。また、得られた成果を論文として発表するための英文校正の費用にも充てる予定である。加えて、平成29年度に得られた研究成果について積極的に様々な学会に参加して発表していく計画であり、学会参加費および旅費として支出したいと考えている。
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Research Products
(6 results)