2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of organoboronic acid catalyst for the site-selectively nucleophilic activation of hydroxy group and its application to carbohydrate chemistry
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17K08218
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
牧野 一石 北里大学, 薬学部, 教授 (20302573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機ボロン酸触媒 / 求核性 / 位置選択的アシル化反応 / 位置選択的グリコシル化反応 / 位置選択的官能基変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
オルト位にアミンを有するアリールボロン酸がヒドロキシ基の位置選択的なアシル化反応を触媒することを我々は見出した。この成果をもとにアリールボロン酸の化学修飾を行った結果,芳香環上に電子供与基であるメトキシ基を導入すると触媒活性が向上することが認められた。一方,電子求引基であるトリフルオロメチル基を導入した場合には反応性は低下するものの,通常のボロン酸触媒を用いた場合には位置選択性が不十分な系において,その著しい向上を図ることができた。なお,この成果については第34回有機合成化学セミナーにおいて発表した。位置選択的アシル化反応以外に系においては,アルキル化反応およびグリコシル化反応の開発について検討している。アルキル化反応については,我々のボロン酸触媒とともにハロゲン化アルキルと酸化銀(I)とを組合せることによって,複数のヒドロキシ基をもつ単糖に対して位置選択的なアルキル化反応が進行することを見出している。グリコシル化反応の開発については,「1位に脱離基を有する糖供与体とルイス酸およびボロン酸触媒とを用いた反応系の検討」ともに,「パラジウム錯体とボロン酸触媒を組合せたアリル位置換反応による反応系の検討」を進めている。いずれの反応系においてもグリコシル化反応における位置選択性が認められるが,後者の反応系においては触媒活性ならびに位置選択的において優れたデータが得られている。アリル位置換反応によるグリコシル化反応では得られる二糖がピラノンとなることから,その生成物のさらなる誘導化についても検討しており,様々な希少糖への変換が可能となることも見出している。このグリコシル化反応に関する成果は,日本薬学会第138年会において発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト初年度としては概ね順調に研究が進捗している。加えて,当初予想しなかった有用な知見をあわせて見出しており,さらなる研究の発展が期待できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに触媒として機能するボロン酸誘導体の合成ならびに位置選択的アルキル化反応とパラジウム触媒との組合せによるグリコシル化反応が進行することを見出している。位置選択的アルキル化反応については,アルキル化剤や基質となる糖の検討については限定された範囲でのみ行っていることから,今後は基質一般性の検討やアルキル化剤の適用範囲について検討する予定である。パラジウム触媒との組合せによるグリコシル化反応では,糖供与体が6-デオキシ型のものについて検討をしていることから,今後は6位にヒドロキシ基をもつものについても行う必要がある。また,当初計画していた「1位に脱離基を有する糖供与体とルイス酸およびボロン酸触媒とを用いた反応系の検討」については,糖供与体における脱離基や共存させるプロモータの種類,溶媒などの反応条件の検討が不十分であり,これらの最適な組合せを見出していく必要がある。 我々の開発したボロン酸触媒は位置選択的にヒドロキシ基の求核性を向上させ様々な分子変換を可能とするユニークな特徴をもつが,その位置選択性発現についての理論的な根拠は不明な点が多い。そこで反応中間体となる環状ボロン酸エステルに対して量子力学計算を適用することで,その求核性の向上の理由についての解明を行うことを計画している。 仮に従来とは異なるヒドロキシ基の求核性を有機ホウ素触媒によって活性化できれば,上述の我々が見出している反応系における位置選択性に対して相補的なものとなり,我々の分子変換反応における有用性をさらに拡張することができる。現在のところ,位置選択的なアシル化反応の検討の過程で,一部のホウ素原子を含む触媒において位置選択性の逆転が生じることを見出している。そこでこれらの有機ホウ素化合物の分子構造を基盤とした従来とは異なる位置選択性を示す触媒の開発を進めていく。
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