2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞内動態のリモート制御を特徴とする核酸送達戦略の疾患治療への応用
Project/Area Number |
17K08238
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
鵜川 真実 摂南大学, 薬学部, 助教 (50735511)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 信至 摂南大学, 薬学部, 教授 (80388644)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 核酸デリバリー / 膜透過ペプチド / プラスミドDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
過去の研究で、特定の低分子薬剤を処置した細胞にプラスミドDNAをトランスフェクションした際に、遺伝子発現活性が上昇するという結果が得られている。一方、オリゴアルギニン固定化高分子は粘膜を介した低膜透過性分子のデリバリーを得意としている。そこで本研究では、オリゴアルギニン固定化高分子によるプラスミドDNAの細胞内取り込みの促進と、低分子薬剤を用いた細胞内での遺伝子発現促進を組み合わせ、効率的なプラスミドDNAの経粘膜デリバリーを達成し、疾患治療へ応用することを目標とする。 まず、過去の研究でpDNAリポソーム製剤による遺伝子発現を促進する効果がみられたドキソルビシンをHeLa細胞に処置した後に、オリゴアルギニン固定化高分子と混合したEGFP発現プラスミドDNAを処置したところ、細胞内のEGFPタンパク質に由来する蛍光の強度が数倍程度上昇した。ドキソルビシンは細胞に遺伝子発現促進効果をもたらす濃度と殺細胞効果をもたらす濃度が近いため、この効果を狙ってin vivoでプラスミドDNAの発現を補助する目的で使用するのは難しいと思われるが、腸粘膜上のがん治療のためにドキソルビシンを使用し、プラスミドDNAを用いた治療と併用するという方法は有効である可能性が示された。 次に、腸粘膜モデルとして用いたCaco-2細胞における遺伝子発現活性を確認した。その結果、ほとんど遺伝子発現活性が確認できなかった。併用薬として、他のグループによりプラスミドDNAの発現効率の向上が報告されているデキサメタゾンを処置しても遺伝子発現は確認できなかった。以上の結果より、Caco-2細胞における十分な遺伝子発現を達成するためには実験条件や製剤方法を改良する必要があることが示唆された。 また、薬剤投与による炎症性腸疾患のモデル動物を作成し、生存日数や症状などを評価し、治療効果を確認するための予備検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、培養細胞を用いた薬剤のスクリーニングを行い、オリゴアルギニン固定化高分子によるプラスミドDNAの遺伝子発現を促進する薬剤を選定する予定であった。 外来遺伝子発現が起こりやすいことが知られているHeLa細胞では、十分な遺伝子発現が起こり、併用薬剤による遺伝子発現活性の上昇が確認された。一方、腸粘膜のモデルとしたCaco-2における遺伝子発現が十分に確認できなかった。以上の結果より、HeLa細胞を用いることで併用薬剤の評価は行えたものの、in vivoで腸粘膜に投与を行っても十分に遺伝子が発現されない可能性が高いことが明らかとなったため、Caco-2細胞において遺伝子発現活性を高めることが今後の研究の進行のために必要であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
粘膜を介した遺伝子導入を実現するためには、Caco-2細胞における導入遺伝子発現レベルを高めることは必須であると考えられる。そこで今後、遺伝子発現を補助する分子とオリゴアルギニン固定化高分子を混合するなどのアプローチによってCaco-2細胞における効果の発現を目指す。 一方、遺伝子発現が起こりやすいHeLa細胞において遺伝子発現活性への影響が見出された薬剤についてはCaco-2細胞やin vivoでも有効である可能性が高いと考えられる。そこで、上記の検討と並行してHeLa細胞を用いて併用薬剤のさらなるスクリーニングを行い、これまでプラスミドDNAの遺伝子発現に対する報告が無い薬剤についても影響を評価する。 また、動物モデルを用いた予備検討を並行して進め、細胞系における問題が解決した際に速やかにin vivo実験に移れるように準備を行う。
|
Causes of Carryover |
平成29年度より研究機関が変わり、実験環境の再構築に時間を要したことや、腸粘膜の細胞のモデルとしたCaco-2細胞における遺伝子発現がin vivoで適用可能なレベルに達しなかったことから、動物を用いた予備検討の開始が遅れ、薬効を有するプラスミドDNAの購入を今年度行わなかったことや、動物購入費ならびに動物に投与するための薬剤の購入費が少なかったことから次年度使用額が発生した。 次年度は、製剤の改良を行い、引き続き細胞系で評価を行う。また、疾患モデル動物を用いた予備実験を並行して行い、細胞系の問題が解決された際に速やかに動物を用いた実験に移れるようにする。そのため、製剤材料や実験動物、細胞培養用品などに主に助成金を使用する。また、動物において治療効果を評価するため、薬効を有するプラスミドDNAの購入にも助成金を使用する。
|