• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2017 Fiscal Year Research-status Report

Roles of opioid peptides in anti-oxidative stress in the brain

Research Project

Project/Area Number 17K08245
Research InstitutionInternational University of Health and Welfare

Principal Investigator

三浦 隆史  国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (30222318)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords酸化ストレス / オピオイドペプチド / 銅 / 神経変性疾患 / 分光法
Outline of Annual Research Achievements

脳は不飽和脂質に富み、酸素消費量も多いことから、生体内でも特に酸化ストレスに晒されやすい部位である。脳における酸化ストレスはアルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患の発症や細胞傷害の主たる原因であると考えられる。脳の機能が正常であれば、神経細胞は常態的に生じる活性酸素類から守られているはずであり、何らかの原因でレドックス制御が破綻すれば酸化ストレス状態となり、病気が引き起こされる。脳における酸化ストレス防御機構の破綻がアルツハイマー病発症の原因であるならば、防御機構が不明である限り対策は立てられない。従って、神経変性疾患の予防へ向けた合理的な戦略を立てるためには、脳が本来持つ酸化ストレスに対する防御機構の解明が必須となる。本研究では、鎮痛作用が主たる役割と考えられているオピオイドペプチドが脳内における抗酸化系を担う可能性に着目し、その機能メカニズムを解明することを目的とした。
タンパク質などの制御下にない銅イオンの酸化還元反応は、脳内酸化ストレスの主原因と考えられる。2017年度は、脳内オピオイドペプチドであるエンドモルフィンが銅イオンに対して特異的に結合し、その酸化還元を制御する可能性を検証する研究を行った。エンドモルフィンは4アミノ酸残基から成る短いペプチドであるが、4残基中の3残基が芳香族アミノ酸であるという特徴的なアミノ酸組成を持つ。その中のトリプトファンの蛍光を利用して、エンドモルフィンと銅の相互作用を調べ、次の結果を得た。
(1) Cu(II)は水溶液中でエンドモルフィンと結合する。
(2) Cu(I)は水溶液中でエンドモルフィンと結合しない。しかし、SDSミセル存在下ではCu(I)と結合できるようになる。
以上の結果から、エンドモルフィンは脂質膜モデルであるSDSミセルに結合した状態ではCu(I)に対して選択的に結合する構造を取る可能性が示された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

エンドモルフィンは4アミノ酸残基から成る短いペプチドであるが、疎水性は高いため、生体内では細胞膜に結合した状態で存在すると予想される。過去に行われた構造研究によれば、エンドモルフィンは水溶液中では伸びた構造を取るが、脂質膜モデルであるSDSミセルに結合するとPro2で折り畳まれ、Tyr1のフェノール環とTrp3のインドール環が接近する構造に変化することが示されている。2017年度に行った研究の結果から、エンドモルフィンはミセルに結合した状態でCu(I)と結合できるようになることが示された。この結果は、ミセルもしくは脂質膜結合状態で、エンドモルフィンの芳香族側鎖がCu(I)に選択性を持つ金属イオン結合ポケットを形成する可能性を示唆する。
脳神経組織の細胞外で偶発的に発生したCu(I)は、放置すれば酸化ストレスの原因となるので、適切なリガンドで保持され、安全にCu(II)に戻される必要がある。本研究の結果は、エンドモルフィンがCu(I)の保護リガンドとしての役割を持つ可能性を示す。芳香環とCu(I)の結合は、Cu(I)に対する一般的なリガンドであるチオラートやチオエーテルと比べて弱いが、Cu(I)を他の分子から隔離し、π電子系との相互作用を利用して、穏やかに酸化還元の制御を行えるという利点を持つ。また、細胞外での銅の酸化還元は、主に細胞膜表面で行われるため、細胞膜結合状態のエンドモルフィンがCu(I)選択的結合能を示すことは生理的意味を持つと思われる。
2017年度の研究により、細胞膜結合状態のエンドモルフィンがCu(I)に結合することは示されたが、Cu(I)の安定化能や酸化還元制御のメカニズムは不明である。2018年度以降の研究でこれらの点を明らかにし、脳内におけるオピオイドペプチドの抗酸化作用メカニズムを解明する予定である。

Strategy for Future Research Activity

(1) エンドモルフィンのCu(I)/Cu(II)酸化還元調節能を調べる目的で、電気化学的手法による酸化還元電位の測定を行う。エンドモルフィンの水に対する溶解度は電気化学の測定を行うには低い。しかし、2017年度の研究成果より、ミセルもしくは脂質膜結合状態のエンドモルフィンがCu(I)結合活性を持つことが示され、ミセル存在下ではエンドモルフィンの溶解度を上げられることもわかった。これらの予備的検討の結果を踏まえ、電気化学アナライザーを用いて銅溶液、および様々な濃度のエンドモルフィンを添加した銅溶液についてサイクリックボルタモグラムを測定し、銅の酸化還元電位とエンドモルフィン濃度の関係を調べる。
(2) Fe(II)とFe(III)の両酸化状態を取る鉄も脳内における酸化ストレスの主要な発生源である。そこで、鉄に関しても酸化還元電位と複合体構造の両面から検討を行い、エンドモルフィンがレドックス制御に関わる可能性を検証する。研究方法は上述の銅の場合とほぼ同様である。
(3) 2017年度の研究では、細胞膜のモデルとしてSDSミセルを用いていたが、2018年度は脂質膜リポソームを用いた検討を開始する。現有の設備で、必要な要件を満たすリポソームを調製するための検討はほぼ終了し、計画を実行に移せる状況となった。リポソームの材料となるホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン等は市販品を購入して用いる。
上記の研究を実施し、脂質膜結合状態におけるエンドモルフィンのCu(I)安定化能、および酸化還元制御のメカニズムを解明する。

Causes of Carryover

ほぼ予定通りの支出であり、残額は約2万円となった。購入予定物品の金額を考慮し、より有効に使用するため、この2万円は次年度に使用することにした。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Comparison of extracellular Cys/Trp motif between Schizosaccharomyces pombe Ctr4 and Ctr52017

    • Author(s)
      Mariko Okada, Takashi Miura, Takakazu Nakabayashi
    • Journal Title

      Journal of Inorganic Biochemistry

      Volume: 169 Pages: 97-105

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.jinorgbio.2017.01.009

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 銅輸送チャネルにおける金属結合モチーフの構造変化と、それに伴う脂質二重膜への埋没2017

    • Author(s)
      岡田毬子, 三浦隆史, 中林孝和
    • Organizer
      第55回日本生物物理学会年会

URL: 

Published: 2018-12-17  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi