2017 Fiscal Year Research-status Report
Combined use of deep learning and CAE simulation for design and optimization of pharmaceutical products
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17K08252
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
高山 幸三 城西大学, 薬学部, 招聘教授 (00130758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 錠剤 / DPCモデル / 残留応力 / 弾塑性体 / 引張強度 / 崩壊時間 / コンピュータ-シミュレーション / 部分最小二乗法 |
Outline of Annual Research Achievements |
錠剤は医薬品適用剤形のおよそ50%を占める最も重要な剤形の一つである。錠剤は服用し易く適切な服用量を計数できるメリットがある。一方で、錠剤製造工程の科学的理解が十分に進んでいるとは言い難い。錠剤の多くは粉体や顆粒の圧密により製造されるため、その内部には様々なベクトルを持つ応力が残留する。本研究では、コンピューターシミュレーションから推算された力学データに部分最小二乗法(PLS)を適用することによって、錠剤の引張強度(TS)と崩壊時間(DT)の予測を行った。 錠剤の主要な成分として、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロースを選択し、シンプレックス格子計画に割り付け10種類の混合粉体を調製した。この粉体200 mgを打力8 kNにて圧縮し、直径8 mmの錠剤を製した。錠剤の形状として、平錠(FLAT)と曲率半径16㎜及び12㎜の凸型錠(R16及び R12)を選択した。粉体圧縮過程をDrucker-Prager-cap(DPC)式によりモデル化し、錠剤内に残留する最大主応力(MPS)とミーゼス相当応力(vMES)を有限要素法により推定した。 乳糖や結晶セルロースの多い処方では、臼壁面から上杵周辺部にかけてMPSの強い残留が見られた。一方vMESは臼壁側に多く残留した。また残留応力の分布は錠剤形状により大きく変化し、錠剤の曲率が強くなるほど残留応力分布の偏りが生じた。MPSとvMESを説明変数としてPLSを適用した結果、TSとDTはいずれも高精度に予測された。一般にMPSは脆性材料の、vMESは塑性材料の力学特性の評価に利用されている。これより錠剤の破壊や崩壊は、脆性と塑性の両者の影響を受け、その力学的物性は弾塑性体として理解できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の予定通りおおむね順調に推移している。DPCモデルによる錠剤内残留応力の推算からMPS及びvMESの分布状態を同定し、またMPS及びvMESの強度と分布状態は、錠剤形状により大きく変化することを明らかにした。さらに、残留応力分布への錠剤処方の影響は弱く、処方が変化しても類似の分布状態を示したが、その強度は処方成分の影響を強く受けることを見いだしている。PLSの適用により、TS及びDTは高精度に予測され、MPSとvMESを推算することの重要性が示唆された。またPLSの結果より、MPSとvMESはいずれも錠剤の品質特性の予測に大きく寄与しており、錠剤を弾塑性体として力学的に取り扱うことの妥当性が示された。 新たな予測技術としてスパースモデリングの適用を進め、すでに錠剤の重要品質特性の予測に寄与する残留応力部位を特定できる可能性を見いだしている。多くの処方成分とプロセスを経て製造される錠剤を科学的に理解することは必ずしも容易ではないが、PLSで得られた予測結果に基づいてスパースモデリングを効果的に活用すれば、従来困難とされてきた錠剤設計に内在する潜在的な構造を解明できると考えられる。 コンピューターシミュレーションの実験的検証も重要な課題である。現在、温度と圧力を感知して発色するマイクロカプセルを導入し、錠剤断面の密度分布を測定することによって、コンピューターシミュレーションの実験的検証を進めている。研究の進捗状況に問題点は見られない。
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Strategy for Future Research Activity |
PLS回帰分析において、説明変数の重要度をVIP(variable importance in projection)により評価し、予測に寄与するMPSとvMESの分布位置を特定する。また、スパースモデルとして、Lasso、RidgeおよびElastic net回帰を導入する。Lassoでは、回帰係数がその絶対値の付加により、Ridgeでは、2乗の付加によって正則化(ペナルティー化)される。またElastic netは両者の長所を兼ね備えた手法であり、各種の多変量問題に対して柔軟に対処できる。これらのモデリング手法を活用することにより、錠剤の重要品質特性の予測に対して、真に寄与する残留応力の種類と部位を特定する。また深層学習による特徴量抽出を試みる。深層学習では、多層構造の人工ニューラルネットワークにより、数千から数万セットのシミュレーションデータが集約され、幾つかの特徴量が抽出される。これらの特徴量は、製剤設計に関わる重要な概念を示すことから、製剤設計における潜在構造を分析できる可能性がある。 コンピューターシミュレーションの結果を実験により検証することも重要な研究課題である。錠剤内部の残留応力は密度分布に相関する可能性が高い。そこでX線μCT(コンピュータトモグラフ)により錠剤断面の密度分布を測定する。また間接的な密度分布測定法として、温度と圧力を感知して発色するマイクロカプセルの利用を進める予定である。また錠剤強度に特化した実験として、圧縮破壊プロセスの測定にDIC(digital image correlation)法を導入し、外力に対する破壊現象とシミュレーションとの相関分析を行う。以上より、実験を必要としない非経験的製剤設計支援システムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定した打錠データ収録装置TK-TB20KNの使用料が 予定額より若干安くなり13,973円の差額が生じた。この差額は次年度の薬品代に充当する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Chem. Pharm. Bull.2017
Author(s)
K.Takayama, S. Kawai, Y.Obata, H. Todo, K. Sugibayashi
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Journal Title
Prediction of dissolution data integrated in tablet database using four-layered artificial neural networks
Volume: 65
Pages: 967-972
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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