2018 Fiscal Year Research-status Report
Combined use of deep learning and CAE simulation for design and optimization of pharmaceutical products
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17K08252
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
高山 幸三 城西大学, 薬学部, 招聘教授 (00130758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 深層学習 / CAEシミュレーション / 残留応力 / DPCモデル / 有限要素法 / スパースモデリング / 部分最小二乗法 / 製剤設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
処方の異なる粉体試料27種類をシンプレックス格子計画に従って調製し、それらの圧密過程をDrucker-Prager cap (DPC) モデルでモデル化し、9種類のDPCパラメータを測定した。粉体試料の主要成分である乳糖、コーンスターチ及び結晶セルロースを要因とする多項式により、DPCパラメータを近似した結果、ヤング率、ポアソン比、初期密度、凝集力及び一部の塑性変形パラメータは高精度に予測され (R2=0.98以上)、DPCモデルを用いた残留応力推算の妥当性が示唆された。 軸対称平面モデルを仮定し、DPCモデルを組み込んだ有限要素法(FEM)により、最大主応力、最小主応力及びミーゼス相当応力を推算した。平型錠では、いずれの応力もほぼ一様に分布したが、凸面錠では、臼壁の近傍で特異な応力分布が認められ、特に杵面の圧縮軸に対して、水平方向に引張応力が、垂直方向に圧縮応力が残留した。粉体処方の差は、応力の強弱に対して強く影響したが、分布状態への影響はほとんど見られなかった。 錠剤断面(右側半面)の最大主応力、最小主応力及びミーゼス相当応力の推算値(総数300箇所)を要因とし、部分最小二乗法(PLS)を適用した結果、錠剤の硬度及び崩壊時間は高精度に予測された。要因重要度の指標としてvariable importance in projection(VIP)を求め、錠剤断面上にマッピングした。その結果、平型錠では、VIPが一様であったのに対し、凸面錠では、錠剤周辺部で高値を示し、特に臼壁近傍で最大値を示した。また、スパースモデリングより弾性ネットを選択し、錠剤の品質特性の予測を試みた。その結果、わずか数点の応力値から、PLSに匹敵する予測式が得られた。これより品質特性の予測に有意に寄与する残留応力部位を特定することができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画に従って概ね順調に進捗している。DPCモデルによる錠剤内残留応力の推算から最大主応力、最小主応力及びミーゼス相当応力の分布状態を同定し、また、これら残留応力の強度と分布状態が、錠剤形状により大きく変化することを明らかにした。DPCパラメータの多くは、錠剤の主要な成分である乳糖、コーンスターチ及び結晶セルロースの配合比からなる多項式により高精度に近似された。これより、DPCモデルを組み込んだFEMシミュレーションの妥当性が検証された。錠剤内残留応力は、従来、臼壁拘束条件下で推算されてきたが、本研究では、非拘束条件下での推算に成功し、拘束条件下とは残留応力が大きく異なることを明らかにした。非拘束条件下での推算によって、実態を忠実に反映する残留応力を、高精度に推算することができた。 残留応力の推算値による錠剤の品質特性の分析では、PLSの適用により錠剤の硬度及び崩壊時間の良好な予測結果が得られた。深層学習の適用も試みているが、現時点では好ましい結果が得られていない。深層学習はビッグデータの分析に適用され、画期的な成果が数多く報告されている。しかし本研究での実験データは小規模(27×300)であり、そのため深層学習が十分に機能しなかった可能性がある。一方、スパースモデリングの適用では、卓越した分析結果が得られ、錠剤の品質特性の高精度な予測に加えて、予測に寄与する残留応力部位のピンポイントな特定に成功した。平型錠では、予測に寄与する応力部位は、錠剤断面に対して一様に分布したが、凸面錠では、錠剤周辺部、とくに臼壁近傍に集中する傾向が見られた。実験データの更なる収集と、FEMシミュレーションの精度向上によって、錠剤品質特性に及ぼす力学的要因を解明できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までの研究により、錠剤の品質特性に寄与する残留応力の強度と部位が特定されたため、今後は錠剤の製造プロセスにおける潜在構造の抽出を試みる。引き続き深層学習の効果的な適用を模索するとともに、新たに構造方程式モデリング及びベイジアンネットワークの可能性を探る。構造方程式モデリングでは、粉体の構成成分比や粉体物性から、粉体の機能を代表する潜在変数を抽出する。また、錠剤の品質に関わる各種特性より、錠剤の機能を代表する潜在変数を推定する。両潜在変数間の因果関係を推定することによって、錠剤の製造工程全体のモデル化を試みる。同様にベイジアンネットワークを適用し、粉体成分から粉体物性を経由して、錠剤特性に繋がるネットワークモデルを構築する。これより、製造工程に関わる設計因子の事前確率から、品質特性の事後確率を推定する。これらの分析を通じて、錠剤製造工程の科学的理解の可能性について検討する。 計算化学により得られた結果を実験的に検証することも重要な課題である。現在、X線断層写真による錠剤断面の密度分布の計測を進めている。予備実験からは、X線断層写真の輝度に大きな差異は認められなかった。そこで、新たなデータ処理技術として、輝度の粗視化による分析について検討する。錠剤の3次元X線画像を小さな直方体(ボクセル)で被覆し、各ボクセルのX線輝度の粗密をヒストグラムとして表すことを試みる。具体的には、ヒストグラムの歪度の大小から錠剤断面の密度の差異を推定しようとするものである。また錠剤強度に関する実験として、圧縮破壊プロセスの測定にDIC(digital image correlation)を導入し、外力に対する破壊現象とFEMシミュレーションとの相関分析を行う。以上より実験を必要としない非経験的製剤設計支援システムの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
購入予定であった錠剤用添加剤を製造メーカーより供与頂いたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(16 results)