2017 Fiscal Year Research-status Report
オルガネラ標的創薬を指向したミトコンドリアカルシウム取込みの制御機構の解明
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17K08275
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山本 武範 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 講師 (80457324)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / カルシウム / 細胞死 / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞死のキーマシナリーであるミトコンドリアの透過性遷移のON/OFF制御の分子基盤構築に向け、その起点となるミトコンドリアのカルシウムユニポーターがCa2+を取り込む分子機構を解明することを目的とする。過去に、ミトコンドリアへのCa2+取り込みに関わる7つのタンパク質が報告されている。これまでに我々は元々Ca2+取り込み機能の欠損したミトコンドリアを持つ酵母に、哺乳類のカルシウムユニポーターのサブユニットを発現させ、MCUとEMREという2つのサブユニットがミトコンドリアCa2+取り込み機能のコアサブユニットであることが明らかにした。 初年度は、MCUとEMREによるCa2+取り込みを他のサブユニットが調節する機構を調べた。この解析に向け、3つ以上の遺伝子を酵母に共発現させる必要がある。そこでまず、マウスのMCUとEMREを酵母ゲノムの適切な遺伝子座にノックインした変異株を構築した。このMCU,EMRE安定発現酵母株のミトコンドリアはCa2+を取り込むことが確認された。次に、このMCU,EMRE安定発現酵母に、マウスの他の5つのサブユニットをそれぞれ一過性発現させた。その結果、いずれのサブユニットも酵母に良好に発現させることができ、またミトコンドリアに局在することが確認された。続いて、これらの変異株からミトコンドリアを単離し、MCU,EMRE依存的なCa2+取り込みに及ぼす影響を解析した。その結果、MICU1またはMICU3を発現させた場合において、Ca2+取り込み機能が亢進することが示唆された。一方、他のサブユニットについてはCa2+取り込みに変化は認められなかった。このことから、MICU1とMICU3はMCU,EMRE依存的なミトコンドリアCa取り込み機能を亢進させる機能があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、MCUとEMREによるCa2+取り込みを他のサブユニットが調節する機構を調べた。 この解析に向け、3つ以上の遺伝子を酵母に共発現させる必要があったので、まず、マウスのMCUとEMREを酵母ゲノムにノックインするために適切な遺伝子座を検討し、両遺伝子を安定的に発現させられる変異株を構築した。 次に、このMCU,EMRE安定発現酵母に、マウスの他のサブユニット(MICU1、MICU2、MICU3、MCUR1、slc25a23)をそれぞれ一過性発現させ、この変異株から単離したミトコンドリアを使って、MCU,EMRE依存的なCa2+取り込みに及ぼす影響を解析した。その結果、MICU1またはMICU3を発現させた場合において、Ca2+取り込み機能が亢進することが示唆された。このことから、MICU1とMICU3がMCU,EMRE依存的なミトコンドリアCa取り込み機能を亢進させる機能を有することが示唆された。 以上のように、初年度の計画に掲げたとおり、カルシウムユニポーターの既知のサブユニットに機能について、酵母発現系を利用した解析系の構築に成功し、その解析系を使って2つのサブユニットの調節機能に関する知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の2点を目標として研究を推進する。 ①平成29年度は、MCU,EMRE依存的なミトコンドリアCa2+取り込み機能をMICU1とMICU3という既知のサブユニットのうちの2つが亢進することが確認された。平成30年度は、この知見についてより詳細に調べるため、MICU1とMICU3の取り込み亢進機能に関して、様々な欠損変異体や点変異体を構築し、これらを使った構造機能相関解析を行うことによって、機能に重要なタンパク質領域やアミノ酸を明らかにすることをめざす。 ②MICU1やMICU3以外にも、ミトコンドリアCa2+取り込みを制御する未知のサブユニットが存在する可能性がある。そのため、平成30年度は、(1)酵母を使った機能相補スクリーニング、(2)プロテオミクス解析、を駆使して、未知の制御因子の分子同定をめざす。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた学術集会への参加を一部取りやめたこと、また実験に関する消耗品が当初予定していたより小額ですますことができたこと、により次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、平成30年度に行う予定のスクリーニング実験(プロテオミクス解析等)で多額の消耗品が必要になることが予想されるため、これらの実験実施のために使用することを計画している。
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Research Products
(7 results)