2017 Fiscal Year Research-status Report
レドックス制御機構としてのメチル化ダイナミクスーがん細胞転移の分子機序の解明ー
Project/Area Number |
17K08277
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (60453057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SOD3 / H3K27me3 / H4R3me2 / FOXO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化ストレス防御酵素の一種であるsuperoxide dismutase 3(SOD3)発現制御機構としてのエピジェネティクス、特に、DNA/ヒストンメチル化ならびに非ヒストンメチル化の関与の解明を最終目標とする。そこで、平成29年度では、ヒト乳がん細胞株、ヒト前立腺細胞株およびがん微小環境間質細胞となるヒト単球系細胞株を用いてその関与を検討した。転移度の異なる2種類のヒト乳がん細胞株(MDA-MB-231細胞およびMCF7細胞)を用いて、SOD3発現に及ぼすDNAメチル化の関与を解析したところ、当初の仮説通りSOD3発現とDNAメチル化との間に負の相関が認められた。また、本傾向はヒト前立腺細胞株(PC3細胞およびLNCaP細胞)においても認められた。 ヒト単球系細胞株(THP-1細胞)におけるSOD3発現に及ぼすDNAメチル化の関与はすでに報告しているため、ホルボールエステル(TPA)誘導性のSOD3発現増大に及ぼすヒストンメチル化の関与を検討した。THP-1細胞をTPAで処理することにより、転写抑制マーカーであるH3K27me3レベルの低下ならびに転写促進マーカーであるH4R3me2レベルの増大が認められた。また同様の傾向がSOD3プロモーター領域においても認められた。 次に、TPA誘導性のSOD3発現増大に対する非ヒストンメチル化の関与を転写因子FOXO1に着目し検討した。FOXO1をノックダウンしたところ、TPA誘導性のSOD3発現増大はmRNAおよびタンパクレベルで抑制された。 以上、平成29年度の研究成果より、本研究を遂行する上での基盤となる実験系を確立することができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、実験系の確立とともに今後着目すべきヒストン修飾および制御因子を選定することができた。特に、TPA誘導性のSOD3発現増大に及ぼすFOXO1の関与は決定的であり、SOD3発現制御機構における非ヒストンタンパクの関与を解析する上での基盤を構築できたものと考える。 一方で、低酸素状態下におけるSOD3遺伝子のDNAメチル化については期待通りの結果が得ることができなかった。これは各がん細胞が有する低酸素応答性の違いに由来すると考えられたが、TETを介したDNA脱メチル化には酸素とともに鉄イオンならびに2-オキソグルタル酸の存在が必要であるため、来年度以降の検討では両因子を添加するなどの実験系を改良する必要があると考えられる。 以上より、一部期待した成果は得られなかったが、次年度に向けての基盤の構築は概ね達成できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究成果をもとに、がん細胞株を用いた実験ではDNA脱メチル化の関与(TETタンパクの関与)を、ヒト単球系細胞株を用いた実験ではヒストン(H3K27me3およびH4R3me2)および非ヒストンタンパク(FOXO1)のメチル化の関与を検証する。 がん細胞株を用いた実験では、前年度に引き続き低酸素環境下でのSOD3遺伝子のDNAメチル化制御を中心に解析するが、十分な影響が認められない場合には、ヒストンおよび非ヒストンタンパクの関与の解析を開始する。また、SOD3発現レベルと細胞増殖との関連性を評価する上での実験系の確立を目指す。 単球系細胞株を用いた実験では、SOD3とFOXO1との関連性を詳細に解析する。TPA誘導性のSOD3発現増大におけるFOXO1の関与は実証できたものの、その関与の分子機構は十分に解析できていない。そこで、FOXO1がSOD3の直接的な転写因子となっている可能性を、ChIP法およびSOD3遺伝子のレポーターアッセイを用いて解析する。また、IP法にてFOXO1のメチル化状態を解析することで、SOD3発現に及ぼす非ヒストンタンパクのメチル化の関与を検証する。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度では、一部の実験では期待した成果が得られなかったが、当初予定の研究にスムーズに着手できたため、効率よく次年度以降の実験の基盤を確立できた。このため、使用頻度・価格の高い抗体試薬および酵素の使用量を節約することができた。また、一部の研究費を市費で賄うことができたため、次年度へ研究費を繰り越すこととなった。
(使用計画)平成30年度では、SOD3発現制御へのFOXO1の直接的関与を詳細に解析するため、抗体試薬ならびに免疫沈降用ビーズを多く使用・購入する予定である。また、がん細胞の増殖・遊走実験に必要なトランスウェルの購入に使用する。
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