2017 Fiscal Year Research-status Report
H2S/活性イオウ分子と同産生酵素CBS/CTHの適応免疫と経口寛容における役割
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17K08287
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
赤星 軌征 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (70534551)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 含硫アミノ酸 / 硫化水素 / メチオニン / ホモシステイン / 高ホモシステイン血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cystathionine β-synthase (CBS) とCystathionine γ-lyase (CTH)はメチオニン代謝回路の中間産物ホモシステインからシステインを生合成する一連の酵素で、ともに硫化水素産生酵素でもある。この経路の破綻は高ホモシステイン血症を招くが、CBS欠損が脳機能や全身性の重篤な症状を招き短命であるのに対し、CTH欠損は一見正常に見えるが様々な栄養的なストレスや投薬に対する潜在的なリスクを持つ。免疫疾患においても高ホモシステイン血症や硫化水素の産生不全が炎症を増悪化するが、免疫細胞での含硫アミノ酸代謝物の作用には不明点が多く、欠損のリスクは定まっていない。本件では我々が作成した長生きなCBS欠損マウスとCTH欠損マウスを用い、腸管免疫系と皮膚免疫系におけるCBSとCTHの発現を確認し、両酵素の欠損マウスに対しハプテン誘導性腸炎および接触性皮膚炎を惹起し、その炎症を評価する。またこれらのハプテンを経口投与することにより経口寛容を起こした場合も解析し、それぞれの免疫系とその相関を含めた適応免疫の全体に対する含硫アミノ酸代謝異常の影響を個体レベルで解析する。本年度の研究では、ハプテン誘導性の2種の腸炎モデル、4種の接触性皮膚炎モデルを試験し、腸管免疫系および皮膚免疫系でのTh1細胞型の細胞性免疫優位な応答と、Th2細胞型の液性免疫優位な応答の惹起について比較解析したが、平常の飼育下のCTH欠損マウスと野生型マウスでは炎症応答に有為な違いはないことが明らかになった。今後は食事性の負荷や硫化水素ドナー投与などの条件下で症状の変化を確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CTH欠損マウスに対してハプテン誘導性大腸炎および接触性皮膚炎を試験した。大腸炎では、ハプテンとしてトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)とオキサゾロンを使用した。TNBSは組織内のタンパク質と結合して抗原化し、クローン病に似たTh1優位の腸炎を引き起こすとされているのに対し、オキサゾロンは潰瘍性大腸炎に似たTh2優位の腸炎を引き起こすとされている。CTH欠損マウスとその同腹仔野生型マウスに対し、TNBSまたはオキサゾロン背面皮膚に経皮感作したのち、7日後に同じハプテンを直腸内に投与することにより腸炎を誘導した。誘導後2日後の腸炎の初期段階で評価した結果、TNBS、オキサゾロンともに野生型・CTH欠損型の腸炎に有為な違いは見られなかった。接触性皮膚炎では、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、トリニトロクロロベンゼン(TNCB)、Th2型優位な応答を示すとされるハプテンであるフルオレセインイソチアネート(FITC)、Th1型/Th2型の応答も示すとされるハプテンであるオキサゾロンを背面皮膚に経皮感作したのち、7日後に同じハプテンを耳に塗布することで皮膚炎を誘導した。惹起後2時間の急性応答および24時間後の皮膚炎ともに野生型・CTH欠損マウスに有為な差は見られなかった。CTHの単独欠損では、ハプテン誘導性の適応免疫応答に総じて違いがないことが明らかとなり、本年度予定した研究は遂行されたと考えている。一方、長生きCBS欠損マウスについてはC3H背景の繁殖が難航しており、マウスの数を揃えることが現在できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ハプテン誘導性の腸炎、接触性皮膚炎ともにCTHの単独欠損では差異はないため、当初の予定通りCTH欠損マウスに負荷をかけて脆弱性の発露がないかを検討する。負荷としては高メチオニン食や低シスチン食、あるいは絶食といった食事性の負荷と、硫化水素ドナーの投与を予定している。また経口免疫寛容についても試験し、腸管免疫での免疫成立時において、含硫アミノ酸経路破綻によるストレスの影響を確認する。負荷試験と平行して、受動的全身性アナフィラキシーや受動的皮膚アナフィラキシー、プリスタン投与による全身性エリテマトーデスモデルといった免疫疾患モデルを試験する。さらに、CTH欠損マウス、CBS欠損マウスに加えて、もう一つの硫化水素産生酵素である3-mercaptopyruvate sulfurtransferase(MPST)の欠損マウスについて同様にハプテン誘導性腸炎、接触性皮膚炎モデルを試験する。MPST欠損マウスはCRISPR-Cas9システムで作成し、現在キメラマウスからF1世代を得ている。MPSTは含硫アミノ酸代謝には寄与しないため、MPSTの欠損はCBSやCTH欠損に比べるとアミノ酸代謝異常は穏当とみられ、ホモシステインレベルが正常な状態で硫化水素産生が低下した状態の結果が得られると考えられる。
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Causes of Carryover |
年度最終盤に行われた日本薬学会にて、学生引率の都合で交通費が想定より安くなったため、1,647円の未使用が発生したが、金額が小さいため、繰越し金として次年度の消耗品費用に充てるほうが基金としての使用理念に合致すると考えた。来年度の消耗品として使用する。
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Research Products
(5 results)